アスキーストアで予約販売が開始された、民生品としては世界初の網膜投影型アイウェア「RETISSA Display」の体験会に参加してきました。
視力の影響を受けない網膜投影
網膜投影は、言葉こそ良く聞くものの、実際にどんなものなのかがよくわかっていなかったのですが、体験してみてその特徴がようやくわかった気がします。
まず網膜投影の仕組みですが、一般的なVR/ARゴーグルなどとは違い、目の前にディスプレイがあるわけではありません。
RGBレーザーをMEMSミラーで反射させ、網膜に直接光を送り込みます。高速振動するMEMSミラーにより網膜上に走査線のように映像を描くのですが、この時、レーザーは常に水晶体(瞳孔)の中心を通ります。これにより、水晶体が持つピント調整機能の影響を受けず(レンズの中心を通る光は常に直進する)網膜に結像させることが可能。つまり、基本的に網膜さえ正常なら近視や乱視の影響を受けずクリアな映像を見ることができます。
QD LASERはもともと医療用機器として網膜投影を研究開発しているとのこと。たとえば、眼鏡型デバイスにカメラを付け、その映像を直接網膜に投影することで視力障害を持つ人を補助しようといったことです。
RETISSA Displayはその民生転用製品なのですが、量産効果で価格を下げたいとの目的もあるのだとか。なにしろ、予約が始まったRETISSA Displayの価格は64万5840円(税込)。民生用とはいえ、おいそれと手が出せる価格ではありません……。
常にピントが合う反面、視線をずらすと映像が消える
そんな網膜投影、通常のディスプレイとは違い、いくつかの特徴があります。
まず、網膜に直接結像するので近視などの影響を受けないのがメリットですが、それだけではなく、常にピントが合っているのも特徴です。たとえば、従来の透過型HMDの場合、目の前に見えている映像は「2m先にある」などの設定がされています。
このため、手の上にキャラクターを載せるように表示させたとしても、その映像と実際の手の平、両方同時にピントを合わせることはできません。しかし、網膜投影ならどこを見てても常に映像にピントがあっているため、手の平とキャラクターを同時に見ることが可能です。
ただし、弱点もあります。常に瞳孔の中心にレーザーを通す必要があるため、目だけで横を見たりすると映像が消えます(レーザーが水晶体の中心を通らないため、網膜で結像できない)。
また、これに関連しますが、視野角が26度ほどと狭くなっています。調整によりもう少し広くも出来るとのことなのですが、人は視界の端に何かが写るとそこを見ようとしてしまうため、目が動いて映像が消えてしまうことに。この辺りの兼ね合いはかなり難しそうです。
見え方はMOVERIOに近い印象
実際に装着してみると下記のような感じ。目の前にリフレクターがあり邪魔そうですが、意外と気になりませんでした。
映像の見え方としては、MOVERIOに近い印象です。もっとはっきりと見えますが、映像の裏側現実の風景も薄っすら透けてみる感じです。ちなみに解像度は1024×600。
アイウェアとしてのRETISSA Display自体には、特にARやVRといった機能は搭載されておらず、単にHDMI入力の映像を出力するだけのものです。
まだ手は出ないけど、これからに期待したい技術
かなり過渡期の製品という気がしなくもないですが、網膜投影はこれから発展していきそうな技術な気はします。
なお、今回試したのは片眼タイプでしたが、8月4日(土)~5日(日)にビックサイトで行われるMaker Faireでは、両眼タイプの網膜投影アイウェアを参考出品するとのことです。
網膜投影を試したいという人にはチャンスかもしれません。