日本最大手の補聴器メーカーであるリオンが、クラウドファンディングを経て発売した聴こえ方をサポートするヒアラブルデバイス「ASMOLA」。
形状としてはネックバンド型のイヤホンではありますが、難聴ではなく補聴器を使うほどではないけれど、小さな声が聞こえづらい、騒がしい場所で聞き取りづらいといった人を対象にした集音機能をメインにしたデバイスです。
聴覚補助は、AirPods Pro (第2世代)も対応を予定するなど、注目されている分野です。ということで、ASMOLAは一体どういったものなのかを確認するため、試用機をお借りしたのでさっそく紹介したいと思います。
ネックバンド型のヒアラブルデバイス
ASMOLAの見た目は、そのままネックバンド型のワイヤレスイヤホンです。右型に電源やボリュームを搭載した操作部があります。
イヤホンユニットはやや大きめ。
使わないときにはブラブラしないよう、両ユニットを磁石でくっつけておくこともできます。ただし、磁力はちょっと弱めです。なお、この磁石部はスイッチになっており、両ユニットをくっつけると電源がオフになります。ただし、離してもオンにはならないので、利用する場合には再度電源をオンにする必要があります。
イヤチップは楕円形のやや特殊な形状で、S・M・Lの種類が付属。Mサイズは2組付属しており、1組は装着済みです。また、付属のイヤチップアダプタを利用すると、市販のイヤチップを使用することもできます。
操作部には、電源ボタンのほか、ボリュームアップ/ボリュームダウンボタンを搭載。側面には充電用のUSB-Cポートがあります。USB-Cポートにはゴムのカバーが付いていますが、このカバーはすぐに失くしてしまいそうです。
専用アプリで動作をカスタマイズ
ASMOLAの細かい動作は、専用アプリでカスタマイズが可能です。
ASMOLA
RION CO., LTD.無料posted withアプリーチ
アプリの見た目は非常にかっこいいのですが、ぱっと見で何がどの機能なのかがわかりづらく、正直な感想としてUIは再考してほしいところ。
詳細は、WEB上でマニュアルが公開されているのでそれを参照してもらうのが一番ですが、簡単に説明すると最上部左側に表示されている数値が周囲の騒音レベル。右側はオプションメニューで、イコライザー設定などが行えます。
「FUNCTION」の欄にある4つが、ASMOLAの肝とも言える機能です。
- ENS(Environment Noise Suppressor):環境音ノイズキャンセル。環境音の雑音を消す機能
- FB ANC(Feedback Active Noise Canceling):イヤホン装着状態で、自分の声がこもらないようにする機能
- WNS(Wind Noise Suppressor):風切り音低減機能
- PNS(Pulse Noise Suppressor):突然発生する外部からの突発音(食器がぶつかる音など)を瞬時に消す機能
これらの機能は、すべてをオンにしたりオフにしたり、自由に組み合わせが可能です。
最下段の「SCENE」は、これらの機能の組み合わせがあらかじめ設定されているプリセットですが、必要に応じて設定の変更も可能です。なお、電源を入れた際は、常に「DEFAULT」になります。
右上の「OPTIONS」からイコライザーの設定が行えます。低音域、中低音域、中高音域、高音域の音量バランスを調整でき、上にあげるとその帯域の音量が大きく、下げると小さくなります。
「VOLUME」は全体のボリュームで、シーンに関係なく共通です。
面白い機能が「BINAURAL BEAMFORMING(バイノーラルビームフォーミング)」。通常、ANCイヤホンなどの外部音取り込みモードで音を拾う場合、音の方向や距離などは失われてしまいますが、ASMOLAは独自技術により左右のマイクに入力される微細な音圧変化や時間差を捉えることができるとのこと。ようするにバイノーラル技術ですが、これにより音の方向を失わずにイヤホンから出力できます。
あまり使うことはないと思いますが、右方向のみ、左方向のみの音を増幅することも可能です。
聞こえかたをパーソナライズ
ホーム画面左上のメニューから、「Hearing Measurement」を選択すると、聞こえかたをチェックし、ASMOLAのパラメーターをパーソナライズすることが可能です。このパラメーターは、アプリで設定できるものとは別の内部パラメーターとのことです。
チェック方法は、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzの各音が段々と小さくなりながら9回鳴るので、何回目まで聞こえたかを入力していくというもの。私は、左耳で高音が聞こえにくいようです。
余談ですが、他のイヤホンでは聞こえかたのチェックとして、「音が聞こえなくなったらボタン押す」というタイプのものが多いです。この方式だと、聞こえなくなってもなんとなく聞こえている気がする状態になり、ボタンを押すのが遅れることがよくあります。ASMOLAのアプリのような何回目まで聞こえたかという方式の方がわかりやすいです。
音楽用イヤホンとしても利用可能
ASMOLAは、空間ヒアスルー専用というわけではなく、音楽を聴くイヤホンとしても利用可能です。対応コーデックはSBC、AAC、aptX、aptX HD、aptX Adaptive、aptX Voice。
若干低音が強めで中音域が埋もれがち、よく言えばフラットな印象です。残念ながら、音楽再生(ストリーミングモード)では、専用アプリでのイコライザ設定などは一切反映されません。
ANCも効かなくなりますが、カナル型でパッシブなノイズキャンセリングが強めなので、そこは意外と気になりませんでした。
実際の使用感 1つ1つの音が際立つ感じ
実際の使用感ですが、ENS(環境音ノイズキャンセル)のおかげで、周囲の低音ノイズ(冷蔵庫や洗濯機、エアコンのモーター音など)は気にならなくなります。
ANCイヤホンの外部音取り込み機能の場合、これらの騒音も一緒に増幅されますが、ASMOLAは周囲の音は聞こえつつ、騒音部分がなくなるような印象です。
人との会話はもちろんのこと、YouTubeなどの音声も増幅されて、格段に聞きやすくなります。ただ、会話中の自分の声も増幅されてしまうのはいまひとつ。ここはしょうがないところでしょうか。
試用する前は、ANCが有効になりつつ人の声だけが聞こえるような想像をしていたのですが、実際には人の声以外も増幅されます。PCでキーボード操作をしていると、静音キーボードでも打鍵音がかなり大きくなります。
そして、Atmoph Windowの音(特に波の音や雨の音など)が増幅され、装着しなければ聞こえないような音もはっきりと聞こえるようになります。実は部屋の中で使っているときに、これが一番困りました。
屋外でも使用してみましたが、交通量の多い道路では、車のエンジン音は消えるものの走行音(タイヤの音)はむしろ増幅されます。
なんと表現すればいいのか難しいのですが、周囲のざわざわとした音が消え、それ以外の1つ1つの音がはっきりとするような感じです。人の声も一緒に増幅されるので、総合的な聞き取りやすいさはアップしています。
ASMOLAは「聴覚拡張」をうたっていますが、試してみると、なるほどこういうことかとわかります。
聞こえづらさを感じているなら試してみる価値はあります
6万5780円とそれなりに高額なので、誰にでも勧められるデバイスではありませんし、常時装着して使うようなデバイスでもありません。騒がしい場所での会話や人の話がちょっと聞こえづらい場合などにさっと装着して使うイメージです。
本当に困っていれば、一度病院で検査を受けて補聴器の利用を考えたほうがいいとは思いますが、補聴器を使うまでもない、たまに聞こえづらいことがある程度、という人ならば試してみる価値はあると思います。
ASMOLAはヨドバシカメラやビックカメラで視聴ができるとのことなので、気になる人は試してみることをお勧めします。
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