
耳を塞がず、周囲の音も確認しながら音楽も楽しめるオープンイヤーイヤホン。ここ数年で、市場にはさまざまなタイプが登場しています。そんな中、Sonyが新たに投入したのがイヤーカフ型オープンイヤーイヤホン「LinkBuds Clip」です。直販価格は2万9700円。
製品の主なスペック
| 目 | 仕様 |
|---|---|
| 型式 | イヤーカフ型オープンイヤー |
| ドライバーユニット | 10.0mm |
| Bluetooth | Ver.5.3 |
| 対応コーデック | SBC、AAC |
| バッテリー持続時間 | 最大9時間(本体)、最大37時間(ケース併用) |
| 急速充電 | 3分充電で約1時間再生 |
| 防水性能 | IPX4(本体のみ) |
| 重量 | 約6.4g(片耳)、約54.0g(充電ケース含む実測) |
| 価格 | 2万9700円(税込) |
Sony初のイヤーカフ型イヤホン
イヤーカフ型は、直近だとHUAWEI FreeClip2が人気ですが、LinkBuds Clipの形状は、ShokzのOpenDots ONEに近いです。
「さまざまな人の耳形状の3Dデータを使った設計と装着試験を繰り返して作られた形状」とのことですが、見た目としては中央が大きく盛り上がった山形で、あまりひねりのないデザインのようにも見えます。こういうシンプルな形状が最適解だったということなのでしょう。

アーチ部分は硬そうに見えますが、そこそこに柔軟性があります。表面はシリコン素材で覆われており、肌触りは良好です。

装着感とフィッティング
締め付けるような強い装着感はなく、装着が緩いと感じる人やもっと密着感が欲しいという人は、付属のフィッティングクッションを取り付けると装着感を変えられます。

なお、最近のイヤーカフ型は左右の区別がないものが増えていますが、LinkBuds Clipには左右の区別があります。左側には小さな突起があり、一応手触りで区別はつくようになっています。また、右側には赤丸、左側にはグレーの丸が印刷されているので、見た目での判断も可能です。

私は耳の形状が特殊なのか、多くのイヤーカフタイプは、左側だけが痛くなって使用を断念していました。LinkBuds Clipも、長時間つけていると左側が痛くなるのですが、フィッティングクッションを利用すると、あまり痛みを感じなくなります(なくなるわけではない)。耳への当たり方が変わるからだと思いますが、フィッティングクッションは「もっと密着させたい」という用途以外にも有効なようです。

充電ケースとバッテリー持ち
イヤーカフ型に限らず、オープンイヤーは全般的に四六時中身に着けていることが多いので、あまりケースを持ち歩くことはないと思いますが、LinkBuds Clipの充電ケースはかなり大きい、というか分厚いです。

これをポケットに入れておくのは厳しそう。もし持ち歩くなら、カバンに入れておくことになりそうです。HUAWEI FreeClip 2などと比較すると、携帯性の面では劣っていると言わざるを得ません。
バッテリー性能
バッテリー持ちは単体で最長9時間、ケース併用で37時間。3分の充電で1時間再生可能な急速充電にも対応しています。
実際の使用感としては、9時に装着を開始し、ほぼ再生しっぱなしで16時ごろに20%を切るという感じ。ボリュームやイコライザーの設定次第ですが、公称通り9時間程度は持ちそうです。
オープンイヤー型としては標準的なバッテリー持ちですが、一日中使い続けることができるのは安心感があります。
機能面の特徴
3つのリスニングモード
LinkBuds Clipには、いくつか特徴的な機能が備わっています。「リスニングモード」もそのうちの1つ。通常モードの「スタンダード」、人の声を聴きやすくする「ボイスブースト」、そして「音漏れ低減」の3つのモードがあります。

「スタンダード」はとくに説明する必要はなく、LinkBuds Clipのフル機能を利用できるモードです。このモードでのみイコライザ設定やDSEEなどを有効化できます。
「ボイスブースト」は、中高音域を増幅し、人の声を聴きやすくするモード。映画やYouTubeなどの配信をみたり、オーディオブックを聞いたりするのに便利なモードです。
「音漏れ低減」は、読んで字のごとく、音漏れを少なくするモードです。とはいえ、何か特別な仕組みがあるわけではなく、高音域をカットしつつ、全体の音量を下げているイメージです。かなりこもった印象になり、正直聞き取りにくく、実用性は低いと感じました。
私の場合、基本的には音楽を聴くのではなく、オーディオブックを聞いたり、YouTubeなどを見たりすることが多いので、ほぼ「ボイスブースト」で利用しています。
音質評価
音質は、「スタンダード」では低音から高音まできれいに聞こえます。オープンイヤーということを感じさせない音作りです。またイコライザーはプリセットから選べるほか、自分好みにカスタマイズも可能。再生中の音楽に対して、いくつかの選択肢の中から好みの音を選んでいくと自分好みの設定が完成する「ファインド・ユア・イコライザー」という機能もあります。

「ボイスブースト」を有効にすると、イコライザーが無効になりますが、代わりに低音が抑えられ、中高音を増幅します。音量も一段上がったように感じ、音声が非常に聞き取りやすいです。ただ、このモードで音楽を再生すると、シャカシャカという感じになるので、スタンダードと適宜使い分けが必要です。
「音漏れ防止」は逆に音漏れしやすい高音を抑えるモードです。全体的にボリュームも抑えられ、こもったような音になってしまうので、あまり使い道はないと感じます。このモードを使うなら、素直に音量を落としたほうがいい気がします。
音漏れについて
音漏れに関しては、常識的な音量で聞いている限り、どのモードを利用していても音漏れはほとんどありません。逆に言うと、音量を上げればその分音漏れは大きくなります。電車内や交通量の多い場所などでは、周りの騒音が入ってくるため音量を上げないと聞こえにくくなりますが、周りに人がいる環境では音漏れが発生しやすくなるので注意が必要です。
今後のアップデート予定
なお、まだ実装はされていませんが、2026年春に実施予定のアップデートで、周囲の騒音レベルに合わせて音量を自動で調整する「アダプティブボリュームコントロール」が追加されます。

また、音楽などのコンテンツ音が、空間で流れているBGMのように聞こえる「BGMエフェクト」も追加予定となっています。音源が遠くから聞こえるように感じられるとのことです。

通話品質について
LinkBuds Clipはもちろん通話にも対応しています。2つのマイクと骨伝導センサーを内蔵。加えて、AIによる高精度ボイスピックアップテクノロジーも搭載しており、周囲の雑音を抑えてクリアな音声を相手に届けることができます。

スマートフォンのレコーダーで自分の声を録音するという方法で確認してみました、周囲が多少うるさくても自分の声のみを録音することができました。
風が強い屋外などでは風切り音が入ることがありますが、屋内であれば何の問題もありません。在宅ワークでのオンライン会議などでも使用できます。
まとめ
ほとんどの場合、オープンイヤーはながら聞きがメインとなるため、音質は二の次となることが多いように思います。しかしながら、LinkBuds Clipは音質面にもしっかりとこだわっており、これまで試してきたオープンイヤーの中ではトップレベルの音の良さです。
反面、音の良さを感じるにはある程度の音量が必要です。そうなると、周囲の音が聞こえづらく、オープンイヤーのメリットが薄れてしまうと感じます。やはり、音楽に集中する・音質にこだわるのであれば、ANC機能を備えたイヤホンやヘッドホンが最適でしょう。
その意味では、LinkBuds Clipは音質にこだわるあまりオープンイヤーの手軽さなどを犠牲にしてしまっており、ややどっちつかずになってしまっているように感じます。
ボイスブーストや音漏れ低減といったモードは、あえてモードにするのではなく、イコライザー設定の1つで良かったはず。クイックアクセスや360 Reality Audio対応なども、オープンイヤーに必要なのかは疑問に感じます(必要としている人は、オープンイヤーは選ばないのではという疑問)。
この辺りを搭載するよりも、左右の区別をなくしたり、ケースを小さくしたりといった工夫がほしかったところです。
とはいえ、オープンイヤー型イヤホンとしては高い性能を持っているので、その点については不満はありません。音質のいいオープンイヤーが欲しいなら、有力な選択肢の1つになるでしょう。

