電気代をエンタメに変えた──auでんき、358万契約・新電力No.1の実態と次の一手

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auエネルギー&ライフは2025年2月26日、「新電力ナンバーワン評価の背景と実態に関する発表・座談会──auでんき10周年を迎えて」を開催しました。MMD研究所の調査で、利用している新電力会社で1位を獲得したことを受けてのもので、同社取締役副社長の吉岡尉登氏による事業解説、MMD研究所所長の吉本浩司氏による調査データの解説、実際のユーザーを招いた座談会という3部構成で行われました。

停滞期を乗り越え、358万契約まで拡大

auでんきは2016年の電力完全自由化とともにKDDIとして提供を開始。2022年7月には「auエネルギー&ライフ株式会社」として分社化し、現在はauでんきを主軸に、オール電化向けプラン、PontaポイントやVポイントと連携したホワイトラベルサービス、都市ガスサービスの「ガス for au」、再生可能エネルギー「じたく発電所」など、複数のサービスを展開しています。

契約数は開始当初から順調に伸びていましたが、2021年度の燃料費高騰を機に停滞期へ。この時期には新電力事業者が相次いで倒産するなど、業界全体が激震に見舞われました。しかしauでんきはその逆境を乗り越え、現在は「再拡大期」に突入。2024年12月時点で358万契約を達成したとのこと。アプリのダウンロード数は400万、1年以上の継続利用率は92.1%と、高い定着率を誇っています。

MMD研究所の調査が裏付けた「新電力No.1」

今回の発表の根拠となったのが、MMD研究所が実施した「2025年新電力に関する調査」です。20歳〜69歳の男女50,000人を対象にした予備調査において、新電力の中でauでんきはシェア5.0%を獲得し、東京ガス(4.7%)、ソフトバンクでんき(2.7%)を抑えてトップに立ちました。

また、ユーザーが電力会社を選ぶ際に重視するポイントについては、「料金の安さ」が全社共通でトップとなった一方、auでんきとソフトバンクでんきでは「ポイントの還元率」が2〜3位にランクインするという結果が出ています。通信キャリア系の新電力は、料金の安さだけでなく、ポイント経済圏との相性が選ばれる理由になっていることがわかります。

差別化の核心は「見える化」──30分単位のグラフと月末予測

吉岡氏が繰り返し強調していたのは、料金の安さではなく「体験」で戦うという姿勢です。auでんきが差別化の軸として磨いてきたのが、専用アプリによる電力使用量の「見える化」機能です。

▲auでんきアプリについて説明するauエネルギー&ライフ取締役副社長 吉岡氏

アプリでは30分単位の電力消費量をグラフで確認できるほか、月末の電気代予測や家電別の使用量予測機能も搭載しています。従来の大手電力会社が月1回の紙の検針票でしか使用量を伝えなかったのに対し、auでんきは日々の行動と消費電力の関係をリアルタイムで把握できる環境を提供しています。

こうした機能によって、アプリ利用者の60%が月300円の節約を実感しており、96.5%という高いアプリ利用率がその効果を裏付けています。

「ガチャ」が節電をエンタメに変えた

アプリに搭載された「ガチャ機能」も特徴的です。電気代1000円につき1回引ける仕組みで、クリスマスやバレンタイン、ひな祭りといったイベントに合わせた限定ガチャも実施。ユーザーの8〜9割がこの機能を利用しており、毎日アプリを開く習慣づけに成功しているとのことです。

座談会では、子どもを持つユーザーからリアルな体験談も語られました。

「8歳、6歳、4歳の子どもたちと横に並んで、ガチャをみんなで回しています。当たったはずれだ!と盛り上がりながら、この週末電気使いすぎだったね!という話もできるので、家族で電気のことを自然と意識するようになりました」

節電という義務感を伴いがちな行動を「家族のエンタメ」に変えてしまう発想は、電力サービスとしては異色のアプローチです。グラフを見て「エアコンをつけっぱなしにした日は電気代が2倍になっていた」と気づいたエピソードも語られており、見える化が具体的な節電行動に直結していることが伝わりました。

別のユーザーからは、こんな活用法も披露されました。

「夫が在宅のときは電気使用量が増えることもあるので、クールスポットみたいなカフェに行ってほしいとお話しする目安にしています」

電力消費の「見える化」が、家庭内のコミュニケーションや行動変容のトリガーになっている様子が垣間見えます。

今回の座談会に参加した3名は、いずれもキャリアショップで機種変更などのタイミングでauでんきの提案を受けて使い始めたとのこと。

実際、吉岡氏によると、加入のきっかけとしては、7〜8割がauショップ経由とのことで、キャリアショップという強力な接点がユーザー獲得を支えている様子です。

次の目標は500万契約、蓄電池・EVも視野に

吉岡氏は今後の戦略として、顧客基盤を500万契約まで拡大し「大手電力会社を含むトップ集団入り」を目指すと明言しました。

拡大の柱は2つあります。一つは、太陽光発電・蓄電池・EV(電気自動車)を組み合わせたエネルギーマネジメントのマネタイズです。自宅で発電・蓄電した電力を一旦蓄電池やEVに蓄え、それをうまく運用してマネタイズしていくという仕組みを今後10年で狙っていきたいとのこと。

もう一つが、「流れ星でんき」のように特定のテーマや体験と電力を結びつける情緒的価値型サービスの展開。リアルイベントの実施も計画されており、デジタルだけに留まらないコミュニティ形成も視野に入れています。

「料金競争」から「体験競争」へ

auでんきの10年間が示したのは、新電力市場において「料金の安さ」だけでは勝てないという現実と、その突破口としての「体験価値」の重要性です。見える化とガチャで日常に溶け込み、ポイント経済圏で経済合理性を提供し、パートナー企業との協業やリアルイベントで心を動かす。電力という「意識されにくいインフラ」に対して、ユーザーが能動的に関わりたくなる仕掛けを積み上げてきた結果が、358万契約・新電力No.1という数字につながったようです。

▲auエネルギー&ライフの吉岡副社長(左)とマーケティン統括部 鷺氏

ガジェットなど好きなことをブログやWEBメディアなどに書いて生きています。ライター仕事は常に募集中

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