
Nothingは2025年8月にHeadphone (1)を3万9800円で発売し、ブランド初のオーバーイヤーヘッドホン市場に参入しました。それから約半年後、同社は「Headphone (a)」を2万7800円で発売します。スマートフォンのPhone (1)/Phone (a)と同じ関係性で、フラッグシップより1万2000円安い選択肢という位置づけです。
ターゲットは「若く、ファッションに敏感なリスナー」とのこと。4色のカラーバリエーション、最大135時間というバッテリー性能、ハイレゾ対応——スペック上は削られた印象は薄いのですが、1万2000円の価格差は確実に存在します。何が残り、何が省かれたのか、Headphone (1)と比較しながら確認していきます。
外観・デザイン|シースルーコンセプトは継承
デザインの方向性はHeadphone(1)と共通しています。内部が透けて見えるシースルーのNothingらしいアプローチは、(a)でも踏襲されています。もっとも、実際に内部パーツが見えているわけではなく、基板やバッテリーをモチーフにしたデザインがシースルー越しに浮き上がって見える仕様で、この点はHeadphone(1)やPhoneシリーズでも同様です。

デザインは共通ですが、素材面では変化があります。Headphone(1)はイヤーカップ周辺部がアルミ、中央部がプラスチックのシースルーでしたが、Headphone(a)は周辺部がシースルーのプラスチックに変わりました。手に取ると差はわかりますが、仕上げはきれいで、見た目として安っぽさは感じません。ただ、クリア素材の部分に指紋が付きやすく、気になる人はこまめに拭く必要があるかもしれません。

装着感・耐久性|柔らかいクッションと実用的なIP52
ヘッドバンドには液状シリコン素材、イヤーカップにはメモリーフォームを採用しています。Headphone(1)と同じく、ユーザー自身での交換はできませんが、修理対応では交換可能とのこと。なお、Headphone(1)の発売からこれまでのところ、イヤーカップの劣化に関する報告は上がってきていないとのことでした。

クッションはかなり柔らかく、ピアスをしている人の耳にも合うように配慮した設計とのこと。どのように配慮されているのかはよくわかりませんが、実際にピアスをしたままでも長時間問題なく装着できました。眼鏡をかけたままでも、強い圧迫感はありません。

プラスチックへの変更で落下時の耐性は多少気になるところですが、50項目以上の耐久テストをクリアしており、充電端子への5000回の抜き差し、ボタンへの10,000回の押下テストなども行われているとのことで、日常使いでの耐久性はある程度確保されていると考えてよさそうです。防塵・防滴はIP52で、汗や軽い雨程度への対応も問題ありません。重量は約310gで、Headphone(1)の329gより19g軽くなっています。
操作性|Headphone(1)の使い勝手を継承、カメラシャッターを追加
物理操作の構成はHeadphone(1)から変わっていません。
- ローラー:回転で音量調整、プッシュで再生・一時停止、長押しでANCオン/オフ
- パドル:クリックで曲送り・曲戻し、長押しで早送り・早戻し
- ボタン:押すたびにあらかじめ設定した機能を順番に切り替え
このボタンに新しく設定できるようになったのがカメラシャッターモードです。 その名の通り、ボタンがスマートフォンのカメラリモコンとして機能します。このほか、音声アシスタントの呼び出しや、ANCの切り替えなども割り当て可能です。設定は、Nothing Xアプリでカスタマイズできます。




音質|「初聴きで心地よい」という方向性
ドライバーはチタンコーティングの40mmで、次世代型マグネットとボイスコイルシステムを組み合わせた構成です。Bluetooth 5.4で、コーデックはSBC・AAC・LDACをサポート。ワイヤレスおよび有線(USB-C・3.5mm)の双方でハイレゾ認証を取得しています。
Headphone(1)との違いとして、KEFとの共同チューニングが(a)では行われていません。Nothingによれば音質を妥協したわけではなく、チューニングの方向性の違いとのこと。Headphone(1)が「聴きこむほどに良さが感じられる」音作りだったのに対し、Headphone(a)は「初聴きで心地よい音」を目指しているとのことです。
実際に聴いた印象では、デフォルトの状態では中高音がややこもった印象を受けましたが、EQで調整するとこのあたりの聴こえ方は変わります。高音を上げすぎると少しシャリっとした感触が出てくることもあるので、好みに合わせてNothing Xアプリで調整してみるのがよいと思います。

空間オーディオも搭載していますが、Headphone(1)とは異なりヘッドトラッキングには非対応。シネマモードとコンサートモードの2種類をNothing Xアプリから切り替えられます。

ANC・外音取り込み|低音域には効果的、圧迫感は少ない
ANCはフィードフォワードとフィードバックのマイクを左右各2基ずつ(計4基)搭載したハイブリッド構成で、AIアルゴリズムによってリアルタイムに調整されるアダプティブに対応しています。アダプティブのほか、低・中・高の3段階でプリセットを切り替え可能です。外音取り込みモードへの切り替えにも対応しています。
ANCの効き具合はそこまで強力ではなく、「高」にしていても周囲の会話がうっすら聞こえるレベルです。モーター音など低音域のノイズはしっかりカットされる一方、中高音域の環境音への効果は限定的な印象です。一方で、ANC特有の耳への圧迫感がほぼないため、長時間着けていても不快になりにくいと感じました。強力なノイズキャンセリングよりも、着け心地を優先する人には合っている設計かもしれません。
通話時には「クリアボイステクノロジー」として、3つのマイクとAIを組み合わせた処理が働きます。AIアルゴリズムは2,800万以上のノイズシナリオでトレーニングされているとのことで、Headphone (1)(マイク4基)と共通の仕組みです。
自分の声をスマートフォンのレコーダーで録音しながら確認したところ、周囲の話し声やBGM程度のノイズは効果的にカットされ、声はしっかり拾えていました。ただし、マウスのクリック音は逆に増幅される印象があります。静音スイッチのキーボードでは問題なかったため、特定の音との相性の問題と思われます。カチカチした高めのクリック音が出るマウスを使っている場合は、通話品質に影響が出る可能性があります。
バッテリー持ち
バッテリー容量は1060mAhで、最大再生時間は条件によって変わります。
| 接続コーデック | ANCオン | ANCオフ |
|---|---|---|
| AAC | 135時間 | 75時間 |
| LDAC | 90時間 | 62時間 |
Headphone(1)はAACでANCオフ80時間・ANCオン35時間だったため、(a)はバッテリー面では明確に上回っています。
ただし、LDACとANCを両方有効にした場合は62時間になります。日常的にハイレゾ音質とノイズキャンセリングを同時に使う場面では、カタログ値の135時間よりかなり少なくなる点は気を付けたいところ。それでも62時間は実用上十分な水準です。
なお、急速充電は5分で8時間再生、フル充電は約2時間です。
まとめ
Headphone(a)は、Headphone(1)のデザインコンセプトと物理操作の使い勝手を引き継ぎながら、価格を2万7800円まで下げたモデルです。素材がアルミからプラスチックに変わったことは手に取ると分かりますが、それ以外の部分でのコストダウン感はそれほど強くありません。
バッテリーはAACのANCオフで135時間と、同クラスの中では余裕のある水準で、充電の頻度を気にしたくない人には選ぶ理由になり得ます。
音質については、デフォルトのEQのままでも聴けますが、好みに応じてNothing Xアプリで調整するとより自分に合った音になると思います。一方でANCは強力さよりも自然な聴こえ方を重視した設定で、長時間使用での圧迫感の少なさは実用面でプラスに働きます。
Headphone(1)と比較した場合、KEFチューニングの有無によって音の方向性が異なります。実際の差がどの程度かは聴く人の感覚によるところも大きいですが、じっくり聴きこむ用途であればHeadphone(1)、バッテリー重視やカラーの選択肢を優先するならHeadphone(a)、という棲み分けになりそうです。
Headphone(1)がセール価格になっているようなケースでは選択がより難しくなりますが、現在の定価ベースでは1万2000円の差をどこに使うかという判断になります。
ファッションやカラーを重視するユーザー、バッテリー持ちを優先したい人、価格を抑えてNothingのヘッドホンを使ってみたい人には、Headphone(a)は十分に選択肢に入る製品です。


