- iPhone 衝撃のビジネスモデル
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- 発売元: 光文社
- 価格: ¥ 735
- 発売日: 2007/05/17
- おすすめ度
iPhone 衝撃のビジネスモデルを読み終わりました。約2時間。
Web2.0が宣伝されて、かなりの時間が経つ。グーグルの影響力は変わらず増大しているし、アマゾンも市場への浸透を拡大している。しかし、オプティミズムに彩られた予測は数を減らしつつある。
グーグルの収益構造は基本的に広告から離れられず、SNS(Social Networking Service)はどう収益を導くか模索中である。収益モデルが確立できずに技術だけが洗練されていくマーケットから、ジョブズiPhoneによってキャッシュを得ようとしている。
どういう方法で?
携帯電話の居場所を電話機からオーグメント(人間の知的能力を増幅
する機器)にシフトさせることによってである。
どんなすごいことが書いてあるのだろうと期待して読んだのですが、正直期待はずれでした。「衝撃のビジネスモデル」と銘打っているものの、肝心のビジネスモデルについてはほとんど触れられていません。
インターフェースの限界
前半は現状のWeb2.0についての概論。技術は洗練されてきたが、収益モデルは依然として古いままといった内容です。
その後、ユビキタスについて触れられています。
物理的な機構であれば、日常生活の中で習得する知恵によって、どのように操作すれば扱えるのか、ある程度の類推が可能である。旧式の冷蔵庫が新型の冷蔵庫に変わったところで、扉の開け方に大変革があるわけではない。
しかし、情報化された冷蔵庫では、扉ひとつ開けるにもアイコン型画面にアクセスさせられるかもしれない。この操作は直観的なものではなく、冷蔵庫の物理的な構造から類推されるものでもない。ユーザはこれまで培ってきた経験を一旦キャンセルして、新たに「情報化された冷蔵庫」の操作方法を学ばなければならない。そして情報化されるのは冷蔵庫だけでなく、すべての事物なのである。
要するに、あらゆるものが情報化されていき、そのインターフェースが個々に異なるとユーザは大変であり、過去に提唱されたユビキタスネットワークが挫折したのはここに原因があるというような内容です。
WindowsのようなOSは、基本部分の操作性を統一することはできるが、その上で実行されるアプリケーションの操作性を統一することはできないとも書いています。
いくらマウスとアイコンという制約があり、ウィンドウズの右上には閉じるボタンが付与されているといっても、家計簿ソフトと原子炉管理ソフトの操作手順が同一にならないことは容易に想像できる。
フェデレート端末という考え方
多様化・複雑化するインターフェース問題を解決する手段として、集約インターフェースモデルをあげています。
社会の様々な場所でその場所に設置されたサービスを使うことになるが、そのサービスにアクセスするための情報機器を一つにしてしまう方法である。
この1つに集約された情報機器を筆者はフェデレート端末と呼んでいますが、iPhoneが最初のフェデレート端末になれる可能性を秘めていると言っています。例えばネットバンクにアクセスする際にはATMの画面をシミュレートして、銀行で使っているそのままの操作性を実現することもできるし、携帯電話を使い慣れていて、操作性を変えたくないのであれば古い携帯電話と同じ使い方をすることもできるということです。
それほど画期的?
本書の中で、筆者はiPhoneの可能性を「こんなことができる。こういう使い方も考えられる。」といろいろ書いているのですが、それらはすべてiPhoneでなくても既存のSmartPhone(Palm機やWM機)でも実現できるものばかりです。また、WindowsMobileとWindowsを一緒くたに考えているような記述もみられ、現行のWM機(に限らずSmartPhone全般)を使ったことがないか、あまり詳しくはないのではないかという感じを受けました。
また、全体的にAppleを称賛しすぎている(悪く言えば信者)感じも受け、この本は提灯記事・提灯本(っていうのか?)なのかと思えてしまうのも残念です。
確かに、iPhoneは一定の成功を納めるとは思いますが、それによって筆者のいうようなフェデレート端末になったり、携帯の進化が加速されるようなことはないと思います。あくまでもSmartPhoneの1機種であり、携帯の進化はSmartPhone全体として進んでいくのでは?
本書のタイトルが「iPhone 衝撃のビジネスモデル」ではなく、「携帯インタフェースの限界と進化」みたいなものであれば、そこそこ納得できる内容ではあるかと思います。第5章で既存の携帯のビジネスモデルについて触れられていますが、このあたりは(生意気な言い方ですが)よくまとまっていてわかりやすいと思いました。