- とてつもない日本
-
- 発売元: 新潮社
- 価格: ¥ 714
- 発売日: 2007/06/06
- おすすめ度
とてつもない日本を読み終わりました。約1時間。
著者は、マンガ通として知られ、ローゼンメイデンの読者だという噂から「ローゼン閣下」とも呼ばれたりしているらしい外務大臣 麻生太郎。
ニート問題や少子高齢化社会を迎えようとしている現在の日本。なんとなく先行きに暗いイメージしか持てないそんな日本について、「日本ってけっこうすいごいんだよ」という明るい気持ちになれるメッセージが込められている内容です。
大きく分けると、前半ではニートや高齢化社会などを肯定的な視点で捉えると同時に日本が世界に与えている影響の大きさを述べ、後半は、外務大臣らしく外交問題を中心に日本の政治の方向性を示しています。
まず前半ですが、アジアにおける日本の役割、アジアに与える影響の大きさを力説しています。日本がこれまでに経験してきた過剰なナショナリズムの昂揚、環境問題への取り組みなどを積極的に近隣諸国に伝え、同じ過ちを犯さないよう協力していくことが重要であり、それこそが日本の果たすべき役割だと説いています。
そして、ニートと高齢者の問題。本書の中で一番面白いと思える部分です。
ニート問題では「ニートはニートのペースで生きていくことを認めてもいいのではないか。あれもスローライフの1種だ、くらいの余裕を持ってみることも、たまには必要なのではないだろうか。」と言っています。
これは確かにそうかもしれない。ただ、だからと言って政府が何もしなくてもいいというわけではない。
ニートの生活を支える親の世代もいずれは死んでしまう。そのときに、ニートから抜け出せる方策を作っておくことは、政治家の仕事だと思う。しかし一方で、人様の生き方にまで国家がとやかく枠をはめてしまうこともないと思えてならないのである。
著者はニートに一定の理解を示しているように思えるますが、著者の持っているニートのイメージには偏りがあるようにも思えます。
ニートの典型例はこんな感じだろうか。一般的な家庭で育った一人っ子で、だいたい中学が高校の時に、成績不振、いじめ、教師との相性が悪いなどの事情があって、学校生活に溶け込めなくなった。その後、引きこもっているわけではないが、自分に自信を持てないから怖くて就職もできない。
「もちろん、もといろいろなケースや事情があるだろうから、これはあくまでもこちらで勝手に想定した「モデルケース」である」と断ってはいるものの、著者はニートに「社会的弱者」というイメージを持っているように感じます。ニートの経験がないので勝手な想像ですが、実際には、「自信がない」のでも「怖い」のでもなくて、単に「働きたくない」だけでは?もしくは働くよりも自分の好きなことをやっていたいのか。なので働こうと思えば普通に働けるし、逆にどんなに「社会参加」とかと呼びかけたところで無駄なような気がしなくもないです。
他にも若者のソフトパワー(ジャパニメーションなどのサブカルチャーが世界に与えている影響)や、老人の労働力に注目して高齢化社会だっていいじゃないかみたいな自論を述べています。全体を通して概ね賛同できるようなポジティブな論調ですが、1つ1つについて浅いというか考察が足りないのではないかと思えるのも事実です。そこさえ気にしなければ、いまどき珍しく前向きな日本を感じさせてくれる一冊です。