紛失防止タグのTileが、盗難防止に役立つ新ソリューションを発表しました。ただし、利用するには身分証明を提出し、何かあれば当局にそれを共有することを許可。そしてTileを悪用したら罰金1億円を支払うという条件に同意する必要があります。
TileやAirTagのようなBluetoothトラッカーは、無くしたものを探す以外にも、たとえば自転車などに隠して装着しておくことで、盗まれた際に場所を特定するといった使い方も可能です。
しかし、AirTagの登場以降、ストーキング目的に使われてしまうという問題が浮上。その対策として、自分のものではないタグが自分と一緒に移動しているのを簡単に探せるようになりました。Tileも「スキャン&セキュア」機能をリリースしています。
これにより、ストーカー対策にはなるのですが、今度は防犯という意味では役立たずに。盗んだ犯人が簡単にタグを見つけられてしまうからです。
こうした状況を憂いてか、Tileの親会社Life360のChris Hulls氏が、Tileに「Anti-Theft Mode(盗難防止モード)」の搭載を発表しました。ようするに、「スキャン&セキュア」でTileを見つけられなくするというモードです。
これをすると、今度はストーカー対策が……という話になりますが、Tileでは「Anti-Theft Mode(盗難防止モード)」を有効にするためには、以下の3点に同意しなければならないという制約を設けることで対応します。
- 政府発行の身分証明書による本人確認
- 法執行機関と提携し、この情報を共有することを許可する(ストーカー行為が疑われる場合は、令状がなくても情報を当局に提出する)
- Tileを犯罪に使用したと裁判で有罪になった場合、100万ドル(約1億3700万円)の罰金を支払うことに同意する
匿名での利用をできなくし、犯罪に利用した場合のリスクを大きくすることで抑止しようという考えです。罰金100万ドルにかんしては、「違法駐車は罰金1万円」に似た雰囲気を感じ、どこまで有効なのかはわかりませんが、Hulls氏は「(犯人が)金銭的な影響を受けるよう、最善を尽くす」「Tileを使ったストーカー事件は非常に少ないので、企業として全力で取り組む余力がある」と追い込む気満々です。
なお、身分証の登録などがあるので、「Anti-Theft Mode(盗難防止モード)」が日本で利用できるかは微妙なところ。
Hulls氏によると、Tileの「スキャン&セキュア」機能はもともとあまり使われないだろうと思ってはいたものの実態はその予想を上回っており、全世界で数百万人のTileユーザーがいるにもかかわらず、「スキャン&セキュア」機能は1日平均52回しか使われていないとのことです。また、Apple(のAirTag)でも似たような状況だろうとしています。
その上で、そもそも人に装着できるような小型の位置情報デバイスは、実名登録を必須にし、ストーカー行為を重罪化するなどの対策を提案しています。あまり使われていない機能で対策するよりも大きな効果があるはずとのこと。
「使われる可能性がある」ということだけで、機能を制限してイノベーションを阻害される現状にかなり不満を持っているようです。
Source: Tile(medium)