
HOVERAir(ZERO ZERO ROBOTICS)が、手持ちのジンバルカメラと自律飛行カメラを1台にまとめた「HOVERAir VERSA(バーサ)」の国内発表会を都内で開催しました。日本では9月29日からMakuakeでの先行販売が予定されており、スターターセットが12万7900円(通常13万9800円)、オールインワンセットが16万2600円(通常17万7800円)です。
発表会には創業者兼CEOのMQ Wang氏が登壇し、製品のデモンストレーションと開発背景を説明しました。

ポケットカメラが、そのまま飛ぶ
VERSAは、見た目は他社のポケットジンバルカメラとよく似たスティック型の本体です。回転するタッチスクリーンを備え、そのまま手持ちで撮影できます。
変化するのはここからで、背面のカバーをスライドさせて外し、フライトユニット(フライトキット)を磁力で装着すると、そのまま空飛ぶカメラになります。手のひらから離陸し、撮影が終われば手のひらに戻ってくる。撮った映像はその場でプレビューでき、スイッチを押してユニットを外せば、また元のポケットカメラに戻ります。

Wang氏は「ドローン」という言葉をほとんど使いません。従来のドローンは危険で複雑、武器にも使われてきたもので、多くの人が本当に欲しかったのは「空を飛べるカメラ」だったはずだ、という考え方です。VERSAは文字通りポケットに入るカメラが飛ぶ製品なので、その主張がわかりやすい形になった、と説明していました。
一人旅でも家族旅行でも、誰かがカメラマン役に回る必要がなく、全員が同じ画に収まる。VERSAの飛行カメラとしての価値をWang氏はそう表現しています。
カメラ性能も「ついで」ではない
VERSAは1/1.3型センサーを搭載し、ダイナミックレンジは17.5段。3軸メカニカルジンバルで、4K/60fps撮影、10-bit HDR、10-bit H-Log記録に対応します。Wang氏は夕暮れや薄暗いバーのような、明暗差の大きいシーンでの撮影を例に挙げていました。

手持ちモードでの撮影時間はバッテリー1本で最大3時間。バッテリーは着脱式で、スライドさせて交換できます。

AI機能と、ミニコントローラー「Mico」
AI関連では、Wang氏が「お気に入り」として挙げたのがAIによる自動構図です。カメラが何を見ているかを認識し、集合写真などで自分から適切な位置を探すというもので、映しているものの認識と「どの動きが最適か」のスコアリングをニューラルネットワークで処理しているとのことです。

もうひとつが「3D Worlds」。従来のオービット(被写体の周囲を回る飛行)は円を描く映像が撮れるだけでしたが、3D Worldsでは旋回中に撮影した画像から周囲の3Dシーンを再構成します。撮影後に別の角度から見返せる、という仕組みです。
編集についても、アプリ側にAI自動編集ツールを用意します。VERSAは手持ちの一人称視点(数分〜数十分と長くなりがち)と、飛行時の三人称視点の両方が手に入るため、AIがこの2つをミックスして映画のようなトランジションを付ける、という使い方を想定しているそうです。
アクセサリーとして、ミニコントローラー「Mico」も用意されます。柔らかい手触りのごく小さな本体で、バッグやハンドルに取り付けられます。マイクとスピーカーを内蔵し、音声での操作に対応。

Wang氏のお気に入りの使い方は「コパイロット」で、前方から追従するフロントフォロー撮影時に、これから右に曲がるのか左に曲がるのかを、あらかじめ機体に伝えられるというものです。ジェスチャーコントロールも次世代版になりました。

230gに詰め込むための技術
質疑応答では、この構成を成立させた技術の話が出ました。Wang氏によると、こうした製品はずっと作りたかったもので、過去にも何度も挑戦しているものの、実現できたのは最近の技術の積み重ねによるものだといいます。
飛行形態での総重量は、X1 Pro Max(192g)と同程度。それでいて飛行時間を確保する必要があり、そのために採用したのがエネルギー密度の高いバッテリーです。Wang氏は約320Wh/kgという数字を挙げ、X1と比べて約40%高いと説明しました。
プロセッサーは4nmプロセス。X1 Pro Maxが7nm、初代X1が11〜12nm世代だったのに対し、微細化によって発熱を抑えています。センサーについても、この新型CMOSを量産採用した最初の製品だと述べていました。ファンもなく、放熱の余地が小さい機体なので、発熱対策がそのまま設計の制約になっているわけです。
カメラの可動域を活かすためにウイングはカメラより上に配置され、その分も重量に効いてきます。ラッチやスライド機構も追加されており、これらを積み上げたうえで、あらゆる部分の軽量化を進めたとのことです。

分離できる構造の強度についての質問には、マグネットラッチが十分に強く、空中で外れたり変形したりすることはないと回答。カバーが奥まで入っていない場合は赤いマークが見える設計で、視覚的に固定状態がわかるようになっています。
気になるところ
「手持ちのポケットカメラ」と「空撮」を1台にまとめる発想自体は目新しくありませんが、ポケットカメラ側の性能を落とさずに成立させている点がVERSAの面白いところです。手持ち3時間・4K/60fps・3軸ジンバルという仕様なら、飛ばさない日でも普通にメインで使えます。

一方で、飛ばす場合は機体登録が必要な重量帯です。家電量販店で手に取って「飛ぶならこっちがいい」と選ぶ人にとって、登録や飛行ルールをどう案内していくかは、これから広く売れていくほど重要になりそうです。

