
CIOは2026年7月1日、10周年記念発表会「CIO UPDATE 2026」を開催し、新製品ラインナップの紹介とあわせて、10周年プロジェクトである「国産充電器プロジェクト」の進捗を発表しました。同発表会では、バッテリー状態の見える化機能を備えた新モバイルバッテリー群や、壁のコンセント自体をアップデート可能にする「Polaris Wall」、1台で複数の充電モードを切り替えられる「NovaPort Ⅲ」なども披露されました。
「日本企業だから応援する」という声から始まったプロジェクト
CIO代表取締役の中橋翔太氏によると、国産充電器プロジェクトは、日本での生産にこだわること自体よりも、経済や雇用、産業といったところまで踏み込んだテーマとして位置づけられているとのことです。すでに国内で生産を請け負える工場自体は見つかっているものの、「メイドインジャパン」というだけではもはや売れなくなっているのが現状だと中橋氏は率直に述べています。理由はコストです。国内生産はどうしてもコストが上がる一方で、品質面での優位性は「ほとんどない」というのが中橋氏の認識です。

それでもプロジェクトを進める背景には、CIOがこの10年で支えられてきたお客様からの声があるといいます。「日本企業だから応援するよ」「いずれかは日本でものづくりをしてほしい」という言葉を実際に多くもらってきたとのことで、中橋氏は「これはいろんなきっかけと出会いがなければ、そもそも実現、そもそもやろうとも思わなかったプロジェクトだった」とも振り返っていました。そのきっかけとなったのが、イチケン氏との出会いだったそうです。

きっかけは、電化製品分解系YouTuberによる「熱い」という指摘
イチケン氏は電化製品の分解、なかでもUSB充電器の分解動画を中心に発信しているYouTuberです。CIOの製品も過去に分解しており、2025年7月には「NovaPort Solo2」(65W)を分解した際に発熱の大きさを指摘。中橋氏いわく、この指摘をきっかけに「言葉を選ばずに言うと、めっちゃ炎上した」状態になったといいます。
ただ、そのなかでユーザーから寄せられた声は批判だけではなかったようです。小型・軽量を求める価値観とは別に、「もっと使っている上で安定して使えるようなもので、特に熱がそれほど発生しないものを作ってくれると、それを使いたい」という声が一定数あり、それが「国産充電器を作ってほしい」という要望とセットで届いたと中橋氏は説明しています。この二つの声を掛け合わせることで実需が生まれるのではないかと考え、2026年初頭、CIOはイチケン氏本人に声をかけ、プロジェクトへの協力を依頼しました。イチケン氏は、回路設計と熱設計の両面からCIOをサポートする立場で加わっているとのことです。
「日本部品0%」が発覚した瞬間
対談で印象的だったのは、プロジェクトの初期段階を振り返るくだりです。中橋氏がイチケン氏に企画内容を見せた際、部品構成における日本製部品の比率は0%だったといいます。イチケン氏はこれを見て「国産充電器プロジェクトなのに日本の部品ないのまずいぞ」と考え、自身のつながりから部品メーカーを紹介したそうです。

もっとも、「最初から日本メーカー製の部品を集めて設計すればいいのでは」という発想が単純には通らない事情もあります。中橋氏によれば、USB充電器のように小型・高出力な製品はサイズや発熱、安全性の条件を同時に満たす必要があり、部品を組み替えるたびに再検証が発生します。日本製部品は納期が長いものも多く、サンプルを調達するだけで3か月かかるケースもあるといい、「採用できるかもわからないのに時間をかけていくと、もうゴールが見えない」と中橋氏は率直に語っていました。そのため、まずは動く製品を完成させることをスタート地点に据え、そこから部品を段階的に置き換えていく進め方を取っているとのことです。

イチケン氏の紹介で実現したのが、抵抗部品メーカーのKOAとのつながりです。もともと熱設計の分野でイチケン氏とKOAにつながりがあったといい、「国産充電器プロジェクトで部品を日本製にしたいというところで、たまたまつながりのあったKOAさんと、CIOをつないでみようかな」という流れだったと明かしていました。
部品調達の実感について、イチケン氏は「日本製のコンデンサーって部品としてはかなり強いんですけど、USB充電器に使うとなると途端に難しくなる」と説明しています。サイズの制約が厳しく、USB充電器向けのサイズの部品が少なくなるためです。半導体についても、日本メーカー製のプロトコルICなどは存在するものの、価格や納期の面でどうしても中国製が強いという実情を明かしていました。
パートナー企業からのメッセージ
対談では、部品を担うKOAと、組み立てを担う福島県のアサヒ電子からのメッセージも紹介されました。
KOAは長野県伊那谷にマザー工場を構える国内抵抗器メーカーで、金額ベースの国内生産比率は約70%とのことです。読み上げられたコメントでは、人命に関わる用途で厳しい品質基準が求められる市場でも高い評価を得てきたとしたうえで、「USB電源のようにユーザーの皆様の身近で動き続ける機器においても安心してご使用いただけるものと考えております」としていました。
アサヒ電子の代表取締役社長・菅野氏は、動画メッセージのなかで「『メイドイン・ジャパン』というだけでは物は売れない時代です」としつつ、「せっかく素晴らしいアイデアがある。国内で形にできないのは本当にもったいない」とコメント。40年近く国内一筋でものづくりを続けてきた企業だと紹介されていました。

「もったいない精神」という、ものづくり観
中橋氏は、国産充電器プロジェクトのメリットについて聞かれた際、日本に根付く「もったいない精神」に触れていました。廃棄を極力なくそうとすれば生産工程の見直しにつながり、それは環境やエコにも波及する。ユーザーからの不良報告を「もったいない」と捉えて改善を重ねていく姿勢こそ、ものづくりの根源にあるのではないか、という考え方です。
イチケン氏はこれを受けて、「工程を一貫していく」ことの重要性を指摘していました。細かい部分に気がつき、慎重に進めていくという日本人の特性は、まずは組み立て工程を一貫して担うファーストステップとして相性がいいのではないか、という見立てです。
今後のロードマップ
対談によると、イチケン氏への声かけは2026年初頭。その後、中国・深センの製造ラインを一緒に視察し、現在は日本への工程移管を進めている最中とのことです。
部品の日本製比率について、中橋氏は対談中に「だいたい59%くらい」という数字を挙げていましたが、抵抗のように点数の多い部品はまだ変数が残っており、この比率は今後も変わっていく可能性があるとしています。国産充電器「NovaPort DUO Ⅲ 65W2C」の発売時期は2026年9月ごろを予定しているとのことです。


イチケン氏は、自身のYouTubeチャンネルでもプロジェクトの進捗を随時公開しており、次回は日本工場での組み立ての様子を発信できそうだとしていました。なお、CIOの特設サイトでも工程や部品比率などの進捗が随時更新されており、対談中の数字とおおむね一致する内容が確認できます。

そのほかの新製品について
発表会では、国産充電器プロジェクト以外にも「挑む」「広がる」という2つのテーマで新製品が紹介されています。
「挑む」のテーマでは、バッテリー状態の見える化に取り組んだ新モバイルバッテリー群が登場しました。使用回数や劣化状態、異常発熱の有無をディスプレイやアプリで確認できる機能を、今後のCIO製品全体に標準搭載していく方針とのことです。


あわせて、壁のコンセント自体をUSB-C対応などにアップデートできる「Polaris Wall」も紹介されました。初回の設置には電気工事士による工事が必要なものの、その後のユニット交換は資格なしでできる構造を目指しているとのことです。

「広がる」のテーマでは、1台で複数の充電モードを切り替えられる「NovaPort Ⅲ」が、国産充電器プロジェクトの実装先ラインナップとしても位置づけられています。このほか、コードリールを内蔵した卓上充電スタンドやモバイルバッテリーなど生活スタイルに合わせた製品群、常夜灯・デスクライト・非常用電源を兼ねる「CIOフットライト」なども披露されました。いずれも2026年秋ごろの発売を予定しているとのことです。


POP-UPイベントについて
発表会の翌日にあたる2026年7月2日から5日までの4日間、東京・原宿の「LIFORK HARAJUKU」にて、10周年記念のPOP-UPイベントが開催されます。営業時間は11時から19時までとのことです。

会場では発表会で紹介された新製品や未発売品を実際に手に取れるほか、来場者にはオリジナルステッカーが配布されます。6000円以上購入すると、限定デザインのポーチと、CIO製品のミニチュアが入ったガチャガチャ(全4〜5種)がもらえるとのことです。会場内にはCIOカフェも設けられ、ドリンクの提供も予定されています。

