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「この世界の片隅に」「夜明け告げるルーのうた」がアニメーション部門大賞を同時受賞。第21回文化庁メディア芸術祭受賞作品発表

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第21回文化庁メディア芸術祭の受賞作品発表が3月16日、国立新美術館で行われました。本年度の応募総数は4192作品。世界98の国と地域から応募があり、これは過去最高とのことです。

アート部門

アート部門の大賞は「Interstices / Opus I – Opus II

風景映像にデジタル処理を加えた、現代美術の一つインスタレーションというジャンルの作品です。

文化庁メディア芸術祭

これを観たときに、(それがなんであるかはわかりませんが)何かしら訴えてくるものはあると思いつつ、正直なところ捉えどころがないというか、よくわからないという印象でした。

その感覚は間違ってはいなかったようで、アート部門の中ザワ審査委員も難解な作品であると言っています。

文化庁メディア芸術祭

▲アート部門 中ザワ審査委員

もちろんそれだけではなく、「静かで控えめな作品ではあるが、背後にあるコンセプトの強さを感じ、確かな説得力がある」とも評しており、こういった作品を大賞として選出できたことを誇りに思っていると話していました。

アート部門は、応募要項に「デジタルなもの」という規定を無くして2年目だったそう。ただ、「メディア芸術祭」というタイトルにつられてなのか、応募作品はメディアアートの域をでないものが多かったとのこと。そもそもメディアアートは現代アートの一角なのかそうではないのかとの議論もあるそうです。

また、メディア芸術祭自体は、マンガ部門やアニメーション部門では受賞したことが評価され、ステータスとなっている部分があるものの、現代美術の中ではまだまだ評価が低く、今後そこも変えていきたいとしていました。

エンターテイメント部門

エンターテイメント部門の大賞は、「人喰いの大鷲トリコ」。

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受賞したゲームデザイナー上田さんは、「ビデオゲーム部門というわけではなく、エンターテイメント枠での受賞ということで、普段ゲームをしない人にも注目し体験して頂ければ」とのコメントをしていました。

工藤審査委員は受賞理由について「映画ではなく、一冊の良質な文学を読んでいる感じ。ゲーム画面を見ながら、余白や行間のようなものを感じ取れる。キャラクターとの交流のようなものが、その余白からあふれ出してくる。そういう体験はすごく新鮮でゲームの新しい展開を見せてくれるのではないかという期待感を込めて大賞に選ばしてもらった」とのことでした。

また、エンターテイメント部門の新人賞では、MetaLimbsというロボットアームが受賞しています。

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このロボットアーム、足の動きと連動し、例えば足の指を握ると手を握るなどが可能。多くの人が短時間の練習で動かせるようになるそうです。

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まだ試行錯誤の段階で、ロボットアームも500g程度のものしか保持できないとのことですが、今後の展開がとても楽しみな作品です。

メディア芸術祭のエンターテイメント部門には、テクノロジーを使った作品が多く応募されるとのこと。そして、そういったテクノロジーは、常に倫理的な批判にさらされていると工藤審査委員は言います。

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▲エンターテイメント部門 工藤 健志審査委員

「数々の技術革新は人類の脅威になりマイナスに作用しているものもあるは間違いありません。一方であらたな思考回路を切り開き、文化を築くきっかけにもなっています。いまは未来を無邪気にイメージすることが困難な時代ですが、テクノロジーの社会的な展開としてのメディア芸術を通し、人間とテクノロジーとのよりよき関係性をしっかりと見き分けていかなければならない」とまとめていました。

アニメーション部門

アニメーション部門では、大賞が平成13年の第5回以来、16回ぶりとなる2作品の同時受賞となっています。

まず1作品目は、「この世界の片隅に

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片淵監督はモロッコの映画祭に出席のため欠席。代わりに製作プロデューサーの真木さんが、「2016年11月に公開した作品が3年越しでやっている。クリエイターとお客さんとの幸せな融合、結びつきがこの映画を支え続けている。幸せな映画になった」と喜びを表していました。

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ちなみに第5回での同時受賞作品は、真木プロデューサーの千年女優でした(もう1作品は千と千尋の神隠し)。

同時受賞のもう1作品は、「夜明け告げるルーのうた

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登壇した湯浅監督は、この作品について「義務と束縛で固まった町と、自由奔放で陽気な考え方の対立。生と死の物語も作品の重要なテーマの一つ」「好きなものを自覚するのは楽しいこと。世間で正しいとされるものを学ぶのも大事だが、自分が何者かということに気づくのも大事。全く違う人たちを理解していくのも楽しいことではないかと思い、この映画を作った」「もっとみんなに理解されたい、みんなを理解したいというラブコールでもある。今回受賞したことで理解されたと理解したい」と受賞の喜びを語っていました。

また、ポニョのパクリではないか?との意見については、「製作中はまったく意識していなかったが、子供のころにみた宮崎作品の影響は出ているかもしれない。似ているかどうかは自分の目でみて確認して欲しい」としていました。

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なお、湯浅監督は、アニメーション部門大賞受賞が今作で3回目(第8回「マインド・ゲーム」、第14回「四畳半神話大系」でそれぞれ大賞を受賞)。これはメディア芸術祭史上、初とのことです。

アニメーション部門の総評としては、「見どころのあるものが多かった」とし、全体的には3つの特徴があるとのことでした。その3つは「①心は伝わりにくいということを描いている作品が多かった。②女の人の活力が中心にある。女性の生き様、女子力が日本のアニメーションの中心になっている。 ③個性を顔で描くというより、衣服で存在感を示すといった作品が多かった」というものです。

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▲アニメーション部門 横田 正夫審査委員

マンガ部門

マンガ部門の大賞は「ねぇ、ママ」。

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作者の池辺さんは欠席でしたが、「ただただうれしく、ありがたい気持ちです」と受賞について、喜びのコメントを寄せていました。

門倉審査委員は「大人へのエールを感じられる作品だった。審査の際には、分析的にというより、ほんとうにいいよねとエモーショナルな感想がでた作品だった」と評価。また、同じく池辺さん作の「雑草たちよ 大志を抱け」も最終選考に残っており、同じ作者の作品が最後まで競るという状況だったとのことです。

マンガ部門全体については、「多用な作品があつまったものの、WEB発の作品で最終選考に残ったものが少なかった。世間ではSNSなどで発表され、大ヒットするものが増えているが、そういったものが少なかったのが残念。来年以降増えてくると思うが、取りこぼしなく評価していきたい」と語っていました。

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▲マンガ部門 門倉 紫麻審査委員

個人的に気になったのは「Pechat」

個人的に気になった作品は、エンターテイメント部門で優秀賞を受賞した「Pechat」。すでに市販されているものですが、ぬいぐるみにボタン上のPechatを取り付け、スマートフォンから音声などを指定し、あたかもぬいぐるみがおしゃべりしているかのようにするガジェットです。

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単純なあいさつなどのほか、読み聞かせや歌を歌ったりも出来るそうです。対象年齢は6歳ぐらいまでのようですが、小さいお子さんがいるなら絶対に気に入られると思います。

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いずれこういうのが、音声AIの出先デバイスというか、インターフェースになっていくような気が済ます。

6月に受賞作品展を開催

今回受賞した作品の贈呈式は6月12日(火)、受賞作品展は6月13日(水)~24日(日)に国立新美術館での開催を予定しているとのことです。

作品展は大賞だけでなく、優秀賞や新人賞など数多くの作品が展示されます。なお、昨年第20回の作品展の様子は下記に書いています。

作品展は、受賞作を一気に観れるというだけではなく、これまで知らなかった作品などにも触れられる場でもあります(従来通りなら、マンガ部門の受賞作品は全巻読めるようになるはず)。ぜひ足を運んでみてください。




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