
ChatGPTを使っていると、気づけば仕事のやり取りや原稿の下書き、家族の話、ちょっとした個人情報まで、かなり立ち入った内容を残してしまっているものです。OpenAIによると、こうしたアカウントを物理セキュリティキーで守る取り組みが始まっています。同社は2026年4月30日(米国時間)に「Advanced Account Security(AAS)」を発表し、その一環としてYubicoとの提携を明らかにしました。日本のメディアにも、Yubicoから5月26日付でアナウンスが届いています。
提携の中身を一言で言うと、ChatGPT向けにOpenAIとYubicoが共同ブランドで仕立てたYubiKeyの2本セットが、OpenAIアカウント保有者向けに用意されたという話です。

セットの中身:使う場面で分担する2モデル
提供されるのは以下の2本で、片方ずつではなくセットでの提供になります。
- YubiKey C NFC – OpenAI:スマホの背面にかざすタップ認証に対応するモデル。出先や、デスクから離れて認証したい場面向けです。
- YubiKey C Nano – OpenAI:USB-Cポートに挿しっぱなしで使える薄型モデル。ノートPCで日常的に使う想定です。
「2本セット」という構成には意味があります。AASを有効にすると、後述するようにパスワード認証が外れるため、キーを1本失くした時の保険として、もう1本(あるいはパスキー)が必須になります。普段使い1本+バックアップ1本、というのが基本的な使い方です。
価格と入手方法、日本からは購入できません
価格は2本セットで68ドル。通常販売されているYubiKeyを2本買うと126ドル前後になるので、半額程度の特別価格です。購入の入口はOpenAIが用意した「高度なアカウント セキュリティ」ですが、残念ながら日本からは購入できません。

なお、AAS自体は、FIDO2に対応した他社製のセキュリティキーや、デバイスに保存するソフトウェアベースのパスキーでも有効化できます。このため、日本で買える通常版のYubiKey 5C NFCなどでも代用可能です。
AASを有効にするとどうなるか
ここが個人ユーザーにとって重要なところです。AASを有効化すると、ChatGPTおよびCodexのアカウントが次のように振る舞いを変えます。
- サインイン手段の制限:パスワードによるサインイン、メール/SMSのサインインコードを無効化。サインインはパスキーまたはFIDO準拠の物理セキュリティキーで行う。
- 復旧手段の厳格化:メールやSMSによるアカウント復旧を無効化。バックアップ用のパスキー/セキュリティキー/復旧キーといった、より強力な手段に限定される。
- セッション管理の強化:サインインセッションを短くし、一定時間ごとに再サインインを求める。新しいデバイスでログインがあれば通知が届き、アクティブセッションの確認とサインアウトが可能になる。
- ログイン試行のメールアラート:登録メールあてに、サインイン試行の通知が届く。
- 会話の学習対象からの除外:有効になっている間、会話はOpenAIモデルの学習に使用されない。
特に注意したいのが、復旧手段が限定される点です。設定時に発行される復旧キーや、登録したパスキー・セキュリティキーへのアクセスを失うと、OpenAIヘルプセンターによれば「アカウントにアクセスできなくなる可能性」があります。「アカウントを物理キーで守る」というのはこういう厳しさとセットの仕組みだ、という前提でやることになります。
個人ユーザーが導入する価値はあるか
OpenAIは公式発表のなかで、AASを特に必要とする層として「ジャーナリスト、公職者、政治的反体制派、研究者、そして特にセキュリティ意識の高い方々など」を挙げています。一般のChatGPT利用者全員が必ず有効化するべき機能というよりは、リスクが高い立場の人や、自分のアカウントに残る情報の重みを意識している人向けに用意された、という位置づけです。
とはいえ、考慮するに値するケースはいくつかあります。
- ChatGPTを業務で常用していて、議事録や顧客名、未公開資料などを入力する機会が多い人
- ChatGPTのカスタム指示やメモリ、APIキーなど、漏れると面倒な情報を蓄積している人
- 過去にフィッシング被害に遭った、あるいは標的にされる立場にあると感じている人
逆に、「ChatGPTは雑談と検索の補助程度」「アカウントを失ってもさほど困らない」という使い方であれば、AASを急いで有効化する必然性は薄いです。物理キーを2本管理する手間、紛失時のリスク、ログイン時のひと手間は、便利さと引き換えのコストになります。
ちなみに、OpenAIが提供する「Trusted Access for Cyber」プログラムの個人メンバーに関しては、2026年6月1日以降、AASの有効化が必須となるアナウンスが出ています。該当する人は対応が必要です。
まとめ
ChatGPTという入口を物理キーで守る選択肢が、OpenAIの公式機能として整いつつあるのが今回のポイントです。共同ブランドのYubiKeyは記号的な意味合いが大きく、機能面では一般の通常版YubiKeyやパスキーでも同じことができます。
「自分は物理キーで守るほどの情報をChatGPTに預けているか」を一度棚卸ししてみて、その上で必要だと感じるなら、共同ブランド版を待たずに、手に入る範囲のセキュリティキーかパスキーで早めにAASを有効化する、というのが現実的な進め方だと思います。
Source: Yubico プレスリリース / OpenAI「高度なアカウントセキュリティのご紹介」 / Yubico × OpenAI 特設ページ

