
Metaは9月24日(日本時間)、年次イベント「Meta Connect 2026」の基調講演で、グラス型のVRデバイス「Meta VR Glasses」を発表しました。発売は2027年春で、米国での価格は1299.99ドル。日本円での価格は未定です。
Meta VR Glassesは、これまでのMeta Questシリーズとは形がまったく異なり、ストラップを使わずにメガネのようにかけて使うVRデバイスです。重さは約100gで、Metaによれば、Meta Quest 3の5分の1。映画館、ワークスペース、ゲーム機の役割を1台に集約した製品と位置づけています。
発表に先立ち、報道関係者向けの説明会と先行体験会に参加してきました。説明会での質疑応答の内容とあわせて紹介します。
「重い」「長時間はつらい」というQuestの課題に向けた製品
説明会では、MetaのVR製品マネジメント担当バイスプレジデント Angela Chang氏が登壇しました。冒頭で取り上げたのは、現行のMeta Questが抱える課題です。Questは11年にわたる開発の積み重ねで、VRというカテゴリーを定義してきた製品であり、特にゲーマーに支持されてきました。一方で、多くの人からは「自分向けではない」と見られており、その理由として、重さ、映画やスポーツ観戦のような長時間の視聴での装着感、人前でのかけづらさを挙げていました。
Meta VR Glassesは、こうした課題に対する回答として開発されたとのことです。性能と質感は「2〜3倍の価格帯の製品に相当する」としつつ、重さはトランプ1組ほどの約100gに抑えたと説明していました。

本体とパックの2パーツ構成
軽さを実現した大きな理由は、2パーツ構成にあります。グラス本体はディスプレイとセンサーだけを担い、演算処理、バッテリー、ストレージは「パック」と呼ばれる別ユニットに収めています。両者は光ファイバーケーブルでつながっていて、パックはポケットやバッグにクリップで留めるほか、机に置いて使うこともできます。

フレームにはマグネシウム合金を採用しています。剛性と強度を確保しつつ、放熱性を高めて顔に当たる部分の温度を抑える狙いがあるとのことです。サイドが開いたデザインで、フルカラーのパススルーにも対応しているので、周囲の様子を確認しながら使えます。
プロセッサはQualcommの新しい「Snapdragon Reality Elite」。パックのバッテリーは、高解像度メディアの連続再生で最大3時間持ち、45Wの急速充電に対応しています。

ディスプレイは5Kのmicro-OLED、37PPD
ディスプレイは、2枚のmicro-OLEDパネルを合わせて5K相当となる「5K Infinite Display」です。解像度は1度あたり37ピクセル(37PPD)。登壇者は「個々のピクセルが見えないくらいの精細さで、文字を読むのに向いている」と説明していました。参考までに、Meta Quest 3の公称値は25PPDです。
光学系には、この製品のために設計したという小型のパンケーキレンズを採用しています。Dolby Visionに対応するほか、フレームにはDolby Atmos対応の空間オーディオが組み込まれています。また、VRデバイスとして初めてIMAX Enhancedの認定を取得しており、IMAX独自の拡張アスペクト比で一部の映画を視聴できるとしています。
なお、度付きレンズはマグネットで装着するスタイルです。

操作は視線、ハンドジェスチャー、音声
Meta VR Glassesは、コントローラーなしで操作することを前提にしています。視線と、人差し指でつまむ「ピンチ」や親指でなぞる「スワイプ」といったハンドジェスチャーを組み合わせる方式で、手は体の横やひざの上に下ろしたままでよいとのことです。
OSにはMeta AIのエージェントが統合されていて、話しかけるだけで映画の再生、アプリの起動、ワークスペースの調整、検索などができます。Meta Questのコントローラー「Meta Quest Touch Plus」もオプションとして使えます。
Meta VR Glassesは、作業用のディスプレイとしての使い方も想定しています。大きなウィンドウを1枚、または複数のウィンドウを並べて表示でき、机やテーブルを「Surfaceキーボード」とタッチパッドとして使うこともできます。
MacやWindows PCとは、ワイヤレスまたはUSB-Cで接続できます。質疑応答でPCやタブレットとの接続方法を質問したところ、DisplayPort入力に対応するデバイスであれば、タブレットや携帯ゲーム機などもケーブルで接続でき、PCについてはワイヤレス接続も使えるとの回答でした。

映画、スポーツ、ゲームをどう楽しめるか
コンテンツ面では、動画配信サービスへの対応を前面に出しています。Meta TVアプリを通じてPrime Video、YouTube、DIRECTV、AMC+、Crunchyroll、Plex、Tubiなどが利用できるとしのこと。説明会ではDisney+やU-NEXTの名前も挙がりました。ただし、利用できるサービスは国や地域によって異なります。
3D映画にも力を入れています。11月から一部の国で、Disney+の加入者が『アベンジャーズ』や『ブラックパンサー』などを3Dでストリーミング視聴できるようになります。Meta VR Glassesの発売時には、新アプリ「Disney Immersive Cinema by ILM」で、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』や『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』のVR Enhanced版を視聴できる予定です。VR Enhancedは、周囲の空間そのものを演出に使うVR向けの新しい映画フォーマットで、登壇者は「シーンを観るのではなく、シーンの中にいる」ものだと説明していました。
スポーツでは、NBA、MLB、ESPNなどのアプリに対応します。発売後は、MLB、NBC Sports、TNT Sports、UFCなどと連携し、年間100以上の没入型ライブスポーツイベントを配信する計画です。
ゲームは、ハンドジェスチャーだけで遊べるタイトルが発売時点で75本以上用意されます。主なものは以下のとおりです。
- 『Beat Saber』:2027年春に大型アップデート。ハンドトラッキングで遊ぶ新モード「Beat Saber: Flux」を追加し、初めてゲーム全体をコントローラーなしで遊べるようになる
- 『Dragon Grove』:Meta VR Glasses向けに開発された3Dパズル。本体と同時発売予定
- 『Tetris Effect: Mixed Realities』:ハンドジェスチャーでテトリミノを操作する新作。2027年発売予定
- 『牧場物語 Your ワンダフルライフ』:ハンドジェスチャーで牧場生活を送れる。近日登場予定
また、Meta Quest Touch Plusコントローラーを組み合わせれば、既存のMeta Questのアプリをすべて利用できます。Bluetoothゲームパッドを使った「Xbox Cloud Gaming」のストリーミングプレイや、携帯ゲーム機を接続して大画面で遊ぶ使い方にも対応します。
主なスペック
| 項目 | 内容(公称) |
|---|---|
| 構成 | グラス本体+パック(光ファイバーケーブルで接続) |
| 重量 | 約100g(Meta Quest 3の5分の1) |
| フレーム | マグネシウム合金 |
| ディスプレイ | micro-OLED×2(5K Infinite Display) |
| 解像度 | 37PPD |
| レンズ | パンケーキレンズ |
| 映像・音響 | Dolby Vision、Dolby Atmos(フレーム内蔵) |
| プロセッサ | Snapdragon Reality Elite |
| バッテリー | 最大3時間(高解像度メディアの連続再生時)、45W急速充電 |
| 操作 | 視線、ハンドジェスチャー、音声(Meta AI)、Meta Quest Touch Plus(オプション) |
| パススルー | フルカラー |
| 外部接続 | Mac/Windows PC(ワイヤレス、USB-C)、DisplayPort入力対応デバイス(ケーブル) |
| 価格 | 1299.99ドル(日本円価格は未定) |
| 発売 | 2027年春 |
※詳細なスペックは後日公開予定とのことです。
質疑応答から:Quest 3は併売、日本も同時発売
説明会の質疑応答で出た内容のうち、購入を考えるうえで押さえておきたいものをまとめます。
まず、Meta Quest 3/3Sとの関係です。Meta VR Glassesは両機より上位のプレミアムな製品という位置づけで、価格も高くなります。ただ、Quest 3/3Sは今後も販売を続け、ゲームに強いQuestとは用途の異なる製品としてラインアップに並べるとのことです。
パックをワイヤレスにしなかった理由についても質問が出ました。登壇者は、この製品の設計を「物理の方程式」にたとえて説明しています。ワイヤレスにするには通信用のチップをグラス側に戻す必要があり、重さ、コスト、遅延がいずれも増えます。映画を1本観られる最大3時間の駆動と、長時間かけていられる軽さを優先し、ケーブル接続を選んだという判断です。
日本での発売時期については、米国先行ではなくグローバルで同時発売になるとの回答でした。パススルーカメラの有無についても、搭載していることを確認しています。
ターゲット層については、現在のゲーム中心のユーザーから、エンターテインメントや複数画面での作業を求める層まで広げたいとしています。登壇者は個人的な意見として、髪型やメイクを気にする女性にとって、ストラップのない形状はVRを使うハードルを下げるとも話していました。
実際に体験してみて

短い時間ですが、実際に体験してみました。今回の体験では、『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』のVR Enhanced版の視聴やハンドジェスチャーでのゲームプレイなどを実施。
かけ心地については、ノーズパッドの調整ができるほか、レンズを左右に動かしてPDの調整にも対応しています。

グラス自体は軽量なので、Quest 3Sのような重さは感じません。カラーパススルーの表示も自然で、これなら長時間装着しての作業も苦にならなそうです。
ハンドジェスチャーの反応も良好で、基本的な操作にコントローラーは不要です。「Surfaceキーボード」やタッチパッドも違和感なく使えました。
なお、標準状態では、周囲から光が入るというか、隙間から周囲が確認できるンドエ没入感は低めになりますが、オプションでライトシールドも用意されるとのことです。
まとめ:VRを「かけるもの」に変える試み
Meta VR Glassesは、ヘッドセットを頭に固定するというVRの前提を見直し、メガネのようにかけるデバイスに作り替えた製品です。演算とバッテリーをパックに切り出すことで、約100gの軽さと37PPDの精細な表示を両立させています。
1299.99ドルという価格は、Meta Quest 3/3Sとは明確に別のクラスです。Meta自身も、ゲーム機としてのQuestとは用途が異なる製品として位置づけています。映画を1本しっかり観たい人、移動中や出張先で大画面の作業環境がほしい人にとっては、有力な選択肢になりうるのではないでしょうか。
一方で、ケーブルでつながったパックを持ち歩く必要があること、駆動時間が最大3時間であること、日本円の価格や国内で使える配信サービスがまだわからないことは、検討時に押さえておきたい点です。発売は2027年春なので、続報を待ちながら判断しても遅くはなさそうです。

