耳ではなく皮膚で聴く。JT発のアイマスク「Relaxonic Cover」を体験してきた

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MENTAGRAPHは2026年9月2日、超高周波アイマスク「Relaxonic Cover(リラソニックカバー)」のメディア向け体験取材会を開催しました。製品自体はすでに発売済みで、価格は2万7500円(税込)。Amazonの公式ストアで販売しています。

今回の取材会の主題は、製品そのものよりも直近のアップデートのほうにあります。専用アプリに休息前後のリフレッシュ度合いをスコアで示す新機能「リフレッシュスコア」が加わり、アプリのデザインも全画面フルリニューアルされました。あわせて、2026年のiF DESIGN AWARD受賞とCES 2026出展の報告も行われています。

JTのコーポレートR&Dから生まれたアイマスク

まず、メーカーであるMENTAGRAPHについて簡単に触れておきます。MENTAGRAPHは、JTグループの事業インキュベーション会社として2024年3月に設立されたウェルテックカンパニーです。母体はJTのコーポレートR&D組織「D-LAB」で、JTグループのパーパス「心の豊かさを、もっと。」を軸に、研究、事業インキュベーション、スタートアップ投資などを手がけているとのことです。

冒頭に登壇したD-LABディレクターでMENTAGRAPH代表取締役の安達淳氏によれば、この製品の出発点はハイパーソニックという技術そのものでした。皮膚で超高周波を含む音を浴びるとリラックス効果があるとされる技術で、D-LABが取り組みを始めたのは2022年ごろ。当時ほとんど社会実装されていない領域で、研究者と組んで新宿の商業施設で音源を流し続けるといった事例がある程度だった、と安達氏は振り返ります。

そこから「手元で使える具体的なものにしよう」と立ち上がったのが、このアイマスクです。安達氏は開発方針についても率直で、ハイパーソニックは効くか効かないかがよくわからないものなので、それがなくても体験価値として成立するものを作った、と語りました。デザインシンキングの手法でエンドユーザーの要望を引き出しながら、自社の技術と組み合わせて一つの製品に落とし込んだ、という経緯だそうです。

スピード休息を支える3つの要素

製品の説明を担当したD-LAB/MENTAGRAPHマネージャーの平尾峻馬氏は、この製品が解こうとしている課題を「仕事モードからオフに切り替えたい。でも、そんな余裕はない」という一言に集約しました。就寝前に仕事のことが頭から離れない、タスクの合間に休憩を取れずパフォーマンスが落ちる、移動中の時間をうまく使えない——といった場面が想定シーンです。

そのうえで、5〜20分の装着で深い休息に入れるよう設計した「スピード休息アイマスク」として位置づけています。仕組みは大きく3つです。

1. 感覚遮断:目と耳を同時に覆って外部刺激をブロックします。安達氏は、目と耳をふさぐだけでも落ち着くうえに、遮断されると残った感覚、特に触覚が鋭敏になると説明していました。ワインや食事を味わうときに目を閉じるのと同じ理屈だ、という補足には納得感があります。

2. 温熱とクッションの圧:目元を約40〜42℃でじんわり温めます。温度は外気温に関係なく一定になるよう制御しているとのことでした。鋭敏になった触覚に温かさと軽い圧が加わることで、リラックス効果を高めるという設計です。

3. ハイパーソニック:耳に聞こえない80〜88kHzの高周波成分を含む音を、耳および耳周辺の皮膚で感じる仕組みです。MENTAGRAPHは、ハイパーソニックを含むサウンドが脳波のα波ポテンシャルを統計的優位に増大させる可能性が示唆されている、としています。効果の度合いには個人差が出やすいことは安達氏自身も認めていて、効く人・効かない人で体感に差が出がちだと前置きしたうえで、感覚遮断と温熱・圧の部分は共通して感じてもらえる価値だと話していました。

主なスペック

項目内容
製品名Relaxonic Cover(リラソニックカバー)
価格2万7500円(税込)
販売チャネルAmazon公式ストア
温熱約40〜42℃
高周波成分80〜88kHz
サウンド3ジャンル・全15種類
利用時間の目安5〜20分(アプリのタイマーは最大20分)
接続Bluetooth
カバー取り外して洗濯可能
対応OSiOS 16以降/Android 11以降(専用アプリは無料)
リフレッシュスコアインカメラ搭載端末が必要
受賞・出展iF DESIGN AWARD 2026受賞、CES 2026出展

サウンドは3ジャンル15種類。3曲はサウンドアーティストの書き下ろし

休息中に流れるサウンドは、Natural Sound(鳥のさえずり、川のせせらぎ、波、雨、湧き水、虫の音)、Sound Art(心海、時波、月雲)、Harmonize Sound(スリットドラム2種、ガムラン2種、チベタンボウル、ウィンドチャイム)の3ジャンル計15種類です。

このうちSound Artの3曲は、自身の声を素材に空間のサウンドをデザインするサウンドアーティスト、poropiore(Yujin Fujiwara)氏が本製品のために制作したオリジナル楽曲とのこと。いずれも、耳には聞こえない80~88kHzの超高周波のハイパーソニックを含んでいます。

実際に装着してみた

装着手順はシンプルで、電源ボタンを3秒長押しして起動し、アプリからBluetoothで接続、曲とタイマー(最大20分)を選んで装着するだけです。

▲わかりづらいですが、操作部にディスプレイが搭載されています
▲内側は柔らかいクッション素材

遮光性と装着感については、アジア人数千人分の顔データをもとに立体形状を設計したとしています。

▲D-LABの平尾氏が装着したところ

装着感は良好で、一般的なアイマスクと大差はありません。装着後、じわじわと目元が暖かくなっていきます。

リラクゼーション音楽の音量はアプリから調整が可能です。肝心のハイパーソニックについては、よくわかりませんでした。もともと可聴域外の音で、効果も個人差が出やすいとのこと。しばらく使い続ければ、なんらかの効果を感じるのかもしれません。

ただ、目元の温熱効果は確かに気持ちがいいです。といいつつ、これだけならば、よくあるホットアイマスクでもいいような気もします。

リフレッシュスコアは「算出」して見える化する機能

今回のアップデートの目玉が、新機能のリフレッシュスコアです。スマートフォンのインカメラで顔を写し、その画像データを独自のアルゴリズムで解析して、今どのくらいリフレッシュできているかをスコアとして算出します。スコアの幅は1から9万9999程度で、数値が高いほどリフレッシュできている状態を示すとのことです。

平尾氏がこの機能を入れた理由として挙げたのは、休息が自分でできているかどうかは判断しにくい、という点でした。これまで主観に頼るしかなかった休息の前後の変化を見える化する狙いです。

面白いのは、使い続けるほど自分のベースラインが定まっていく設計になっていることです。同じ時間帯に数日続けて算出すると、その人個人の基準に合わせたスコア確認ができるようになるとのこと。平尾氏は開発を通じて1か月以上使っており、スコアを見て「今日はまずいから早く寝るか」と判断することがある、と話していました。スコアの横には天気アイコンも表示され、数字だけでなく直感的にも状態がわかるようになっています。

算出には5分の間隔が設けられています。スコアが悪かったからもう一度、という連打ができない仕様ですが、これは主旨があくまで休息のほうにあるからだ、という説明でした。撮影した顔画像はスコアの算出だけに使い、算出後すぐに削除するとのことです。

この機能はアイマスク本体がなくても使えるので、製品を持っていなくてもアプリ単体でリフレッシュ度合いの傾向をつかむ、という使い方もできます。

Relaxonic Cover

Relaxonic Cover

MENTAGRAPH INC.無料posted withアプリーチ

アプリはフルリニューアル

もう一つのアップデートが、アプリのデザイン刷新です。これまでは曲のサムネイルを一覧で並べる簡素な作りでしたが、全画面のデザインを一から再構築しています。

見た目だけの変更ではなく、操作ステップを最小限に抑えて、休息したいと思ったときにすぐ始められることを狙った設計とのこと。新しい画面では、曲を選ぶ画面に5分・10分・20分の休息時間がそのまま並び、「休憩を始める」ボタンまで1画面で到達できるようになっています。

カバーは洗える。中身はマジックテープで分離

日常的に顔に着けるものなので、清潔さは気になるところです。Relaxonic Coverはカバー部分を取り外して洗濯できる構造になっています。

本体を開くとマジックテープになっていて、バッテリー、スピーカー、温熱部が一つの塊として取り出せます。肌に触れるカバー側だけを洗い、機械部分は肌に触れないため汚れの心配は基本的にない、という設計です。戻すのも慣れれば難しくないとのことでした。

iF DESIGN AWARD 2026では、この洗えるカバー構造をはじめとする長期使用を見据えた設計も評価ポイントに挙がっています。ほかに評価されたのは、短時間で仕事モードから休息モードへ切り替える体験をプロダクトとアプリ一体で設計している点、超高周波音と温熱を組み合わせた没入感、遮光性と装着感を両立する立体形状と素材設計です。

導入実績とこれまでの露出

法人向けの設置事例も紹介されました。三菱地所の「まちまるごとウェルネスウィークス」(2025年9月8日〜26日)では新丸ビルの就業者ラウンジに設置され、丸善ジュンク堂の「ちょっと、ひといき展」(2025年12月5日〜2026年1月12日)では虎ノ門ヒルズのコワーキングスペース「magmabooks」に貸出用として置かれたとのことです。

このほか、Makuakeでの先行販売では達成率850%、支援総額470万円、174人のサポーターを集めたほか、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」の「トレたま」出演、日経クロストレンドでの掲載といった実績があります。CES 2026では、展示の合間に立ち止まって休息できる場として来場者から好評だったほか、海外展開への期待の声も多かったとしています。

まとめ:休息の「入り口」を短縮する道具

Relaxonic Coverは、休息の効果そのものを高めるというより、休息に入るまでの時間を短縮する道具だと理解すると、位置づけがわかりやすいと思います。目と耳をふさぎ、温めて、音を流す。個々の要素は目新しくありませんが、それを5〜20分で完結する一つの体験としてまとめ、アプリ側で前後の変化まで見える化するところまで設計している点が特徴です。

価格は2万7500円(税込)。目元を温めるだけの製品と比べれば高価ですが、スピーカーとアプリ、洗える構造まで含めたウェルテック製品として見れば、極端に強気な値付けという印象は受けません。

向いているのは、デスクワークの合間や就寝前に切り替えのきっかけがほしい人、移動時間を休息にあてたい人でしょうか。一方で、ハイパーソニックの体感には個人差があるとメーカー自身が認めているので、その部分に期待して買うと評価が分かれるかもしれません。

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