ユーキャン、耳をふさがない集音器「テルマホン」を3万9800円で発売

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ユーキャンは2026年9月3日、デジタル集音器「テルマホン」を発売しました。価格は3万9800円(税込/一括価格)。カラーはブロンズゴールドとスマートグレーの2色展開で、販売はユーキャンの通販限定で、同社が独占的に販売する商品です。

ユーキャンといえば資格・通信教育の印象が強いところですが、通信販売事業では大人世代向けにテレビ用手元スピーカーや集音器を約15年扱ってきており、聞こえ関連商品の累計販売件数は約40万件にのぼるとのことです。テルマホンは、その延長線上で、聞こえの研究・開発を手掛けるテルマエンジニアリングと共同開発した製品になります。製造元は秀朋株式会社です。

▲左から、ユーキャン ウェルビーイング事業部 統括マネージャー 原氏、ユーキャン 執行役員 初野氏、テルマエンジニアリング 代表 中島氏

耳をふさがず、「耳珠伝導」で音を届ける

テルマホンの最大の特徴は、耳穴に入れないオープンイヤー構造です。耳の入り口に軽く触れる形状で、耳かけアームを回して装着します。

なぜ耳に入れないのかについて、テルマエンジニアリング代表の中島照正氏は、耳穴に入れるタイプの集音器で「買ったのに使わなくなってしまう」人が多いという現実を挙げました。理由を調べると、耳をふさぐ圧迫感やこもり感、長時間装着の疲れ、そして不快なハウリングが並んだといいます。

音の届け方には「耳珠伝導」という耳慣れない言葉が出てきました。通常の空気伝導に加えて、耳珠(じじゅ)——耳穴の手前にある小さな突起——を経由して振動を鼓膜へ伝えるという経路です。これを担うのがスピーカー外周に取り付けられたシリコン製の「サウンドフィルター」で、装着すると突起部が耳穴の真下のU字型の溝にはまり込み、耳珠に直接音を伝えるという説明でした。空気伝導と耳珠伝導のダブルで音を届けることで、言葉が聞き取りやすくなる、というのが同社の主張です。この経路まわりは特許出願中で、出願人は秀朋株式会社となっています。

耳珠は外耳道の入り口にある軟骨です。この部位に振動を伝えて音を届ける仕組みは、2004年に奈良県立医科大学の細井裕司氏が発見した「軟骨伝導」——気導・骨導に次ぐ第3の聴覚経路として知られる——と原理が近いように見えます。ユーキャン側は軟骨伝導という言い方はしていませんが、耳の軟骨を振動板として使うという発想は共通しています。

周波数の設計思想も示されました。加齢による聞こえの低下は主に子音に影響し、その子音は3〜6kHzの高い周波数帯に多く含まれます。テルマホンでは、子音の聞き分けに関わる2〜6kHz付近を補うチューニングを施したとのことです。「ひろい」と「しろい」、「しぶや」と「ひびや」の区別がつきにくくなる、という具体例が挙げられていました。

スマホを使わない。ケースがリモコンを兼ねる

もうひとつの軸が操作性です。専用アプリのダウンロードは不要で、ペアリングもありません。付属の「充電リモコン付ケース」で音量調節・充電・収納をすべて済ませられます。

デモンストレーションでは、ケース上面の大きめのボタンで左右それぞれの音量を調整していました。ケースと本体の送受信距離は約10mとされています。本体側にも音量ボタンがあり、押すと音声ガイダンスが流れます。基本操作は「ケースから取り出す・耳に装着する・音量を合わせる・使用後にケースへ戻す」の4つだけ、というのが同社の整理です。

▲本体にあるボリューム。+/-ではなく、大/小なのがユーザー層を反映している

その裏返しとして、スマートフォンとペアリングして音楽を聴いたり通話したりする使い方はできません。集音に用途を絞った製品です。見た目がオープンイヤー型のイヤホンに近いので、ここは誤解しやすいところかもしれません。

開発担当のユーキャン・浅村健二氏は、スマホ連動も技術的には可能だったが、あえて採用しなかったと述べています。開発期間は約2年で、試作のたびに「自分の親世代である70代、80代が本当に使いやすいか」「自分自身が贈りたいと思えるものになっているか」を基準に確認を重ねたとのこと。実際の利用者24名への試聴インタビューも実施したそうです。ユーキャンの通販事業の顧客は平均年齢77.3歳とのことで、想定読者像はかなり明確です。

小さくしなかった理由と、ハウリング対策

質疑では、本体サイズについての質問が出ました。本体は幅43×奥行24×高さ59mm(耳かけアーム含む)で、片耳17g。イヤホンの感覚でいえば、かなり大きい部類です。

▲イヤホンとしては大きめなサイズ感
▲裏側

中島氏はこれを意図的な判断だと説明しました。世の中の製品はBluetoothイヤホンを軸に小型化を目指し、そのためにいろいろなものを犠牲にしているが、性能と装着性を重視し、高齢者が簡単に扱えることを優先すると、このサイズに落ち着くという理屈です。指でつかみやすく、付け外ししやすく、紛失しにくいサイズを「性能の一つ」と位置づけていました。

開発で最も苦労した点として挙げられたのもハウリングでした。小型化するほどマイクとスピーカーが近づき、一方でマイクの感度は上げ、スピーカーの音は大きくしなければならない。この矛盾への対処として、サウンドフィルターにハウリング防止の役割を兼ねさせ、スピーカーから出た音がマイクに入りにくい構造にしたうえで、デジタル処理も組み合わせているとのことです。最大音響利得は45dBです。

両耳での使用を想定した製品ですが、片耳のみでの使用も可能とのことでした。

なお、公式ショップでは、商品到着後8日以内であれば使用後でも返品を受け付ける旨が案内されています(返送料は購入者負担)。耳もとに着けるものは合う・合わないの差が大きいので、試せる条件が明示されているのは実用的なところです。

短時間ですが、装着してみました

発表会後の体験コーナーで、ごく短時間ですが実機を装着してみました。

まず、写真で見るより実物は大きいです。ただ、装着感そのものは悪くありませんでした。重さ17gが耳の外側と耳の上に分散するためか、耳への負担は感じにくい構造です。

▲意外と大きめ
▲デザインはごついですが、逆にこのデザインのワイヤレスイヤホンなら、少し欲しいかも

気になったのは、メガネとの干渉でした。ユーキャンは公式ショップで「メガネを掛けても大丈夫」とうたっていて、着けたあとの状態については確かにその通りだと感じます。ただ、耳かけアームを回して装着する動作の途中では、メガネのつるが邪魔になりました。いったんメガネを外して装着し、そのあとで掛け直すほうがスムーズです。毎日使う道具なので、この一手間をどう受け取るかは人によりそうです。

音については、短時間の装着なので聞こえの質までは判断できませんが、音が増幅されている感覚は確かにありました。個人的に意外だったのは、ハウリングが出なかったことです。オープンイヤー型の集音器では、装着時や取り外し時に手で耳を覆うとハウリングが起きやすく、NTTソノリティのcocoe Earなど、常用時のハウリングは十分に抑えられているものでも、この場面では鳴ってしまうことがあります。テルマホンではそれがありませんでした。

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とはいえ、集音器は毎日使い続けられるかどうかで評価が決まる製品です。長時間装着したときの疲れや、騒がしい場所での聞き取りやすさは、腰を据えて試してみないと分からないところが残ります。

主なスペック

項目内容(仕様)
商品種別デジタル集音器(医療機器ではありません)
構造耳穴をふさがないオープンイヤー型/耳かけアーム(チタン+エラストマー成形)
最大音響利得45dB
連続使用時間約10.5時間(音量4のとき)
充電時間充電ケース+左右本体の満充電で約3.5時間
充電端子USB Type-C
電源[本体]3.8V リチウムイオンポリマー充電池 150mAh /[ケース]3.7V 1400mAh
ケース(リモコン)送受信距離約10m(障害物のない状態)
製品サイズ(約)[本体]幅43×奥行24×高さ59mm(耳かけアーム含む)/[ケース]幅134.0×奥行90.0×高さ45.2mm
質量(約)[本体]右17g・左17g /[ケース]150g
※公式ショップの表記は[ケース+本体]150g
カラーブロンズゴールド/スマートグレー
付属品ケース(充電・リモコン機能付き)、電源アダプター/USB充電ケーブル、使い方ガイド
販売ユーキャン通販限定(家電量販店での取り扱いなし)/8日以内の返品可(返送料は購入者負担)
価格3万9800円(税込・一括払い)/分割は月々2980円×14回・総額4万1720円

立ち位置をどう見るか

耳をふさがない集音器というジャンルは、この1年ほどで選択肢が増えました。同じ価格帯には、ミライスピーカーが8月に一般発売したイヤカフ型集音器「ミライスピーカー・イヤー」(3万9600円・税込)もあります。ただ、そちらが専用アプリでの聞こえチェックを売りにしているのに対し、テルマホンはスマホを使わない方向に振り切っている点が対照的です。

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スマホの設定ができる家族が近くにいるならアプリ対応モデルの利点は大きいですし、逆に本人が一人で完結させたい、あるいは贈り物として渡してそのまま使ってもらいたいなら、ケースだけで操作が完結するテルマホンの割り切りは分かりやすい選択になりそうです。どちらが上という話ではなく、使う人の環境で決まる部分ではないでしょうか。

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