
NTTソノリティは2026年6月18日、新ブランド「cocoe(ココエ)」の第1弾製品となる「cocoe Ear(ココエイヤー)」の一般販売を開始しました。価格は3万9600円(税込)で、カラーはホワイト、ベージュ、ブラックの3色が展開されています。
NTTソノリティといえば、耳をふさがないオープンイヤー型イヤホン「nwm(ヌーム)」を「耳スピ」として展開してきた実績がありますが、新ブランドのcocoeは、加齢や生活環境によって「聞こえづらさ」を感じ始めた層に向けて立ち上げられました。NTT側は「聞こえのインフラ」をつくるという表現を用いており、本製品は単なるガジェットの枠を超えた、より大きな音声構想の入り口という位置づけのようです。
今回、レビュー用に実機をお借りしたので、使用感などをお伝えします。
補聴器でもイヤホンでもない「集音器」という立ち位置
まず前提として、cocoe Earは補聴器ではありません。難聴の聴力改善を目的とした医療機器ではなく、周囲の音を増幅して聞き取りやすくする「集音器」の機能を持ったワイヤレスイヤホンです。
NTTソノリティの提示データによると、国内で聴力に課題を感じている人は約1430万人存在しますが(JapanTrak 2018調査報告)、実際に補聴器を使用している人はそのうちの約15%にとどまるということです(JapanTrak 2022調査報告)。cocoe Earは、まさにその「補聴器を使うほどではないけれど、最近少し聞き取りづらさを感じる」という層をターゲットにしています。従来の集音器の多くは耳を塞いで音を増幅する仕組みであったのに対し、本製品は耳を塞がないオープンイヤー構造を採用している点が最大の差別化ポイントと言えます。
cocoe Ear 主なスペック
| 項目 | cocoe Ear |
|---|---|
| 価格 | 3万9600円(税込) |
| 発売 | 2026年6月18日 一般販売開始 |
| カラー | ホワイト/ベージュ/ブラック |
| ドライバー | ダイナミック型・口径12mm |
| 再生周波数帯域 | 100Hz〜20,000Hz |
| Bluetooth | Ver.5.4/マルチポイント最大2台・マルチペアリング8台 |
| 対応コーデック | SBC、AAC、LC3、CVSD、mSBC |
| マイク | MEMS(全指向性)2個 |
| 集音音量 | 0〜7の8段階 |
| バッテリー | 集音/音楽再生ともに約8時間、5分充電で約1時間、本体約1.5時間でフル充電 |
| 防塵防水 | IP54相当 |
| 質量 | 本体約10g(片耳)/充電ケース約65g |
| 本体サイズ | 約45.2×12.8×35.8mm |
| 付属品 | USB-C to Aケーブル、脱着式ネックストラップ ほか |
別売:cocoe Link(テレビ用Auracastトランスミッター)1万560円(税込)/約78g/バッテリー非搭載
0.0025秒の極低遅延と「PSZ」技術がもたらす自然な音響拡張
人間は年齢とともに高音域から徐々に聞き取りにくくなる一方、低音域の聴力はそれほど落ちない傾向にあるそうです。cocoe Earはこの特性に着目し、耳を塞がない構造を活かして、周囲の生の低音域はそのまま耳へと届けつつ、減退しやすい高音域を中心にデジタル処理で増幅して同時に届けるアプローチを採っています。このハイブリッドな手法により、違和感の少ない自然な聞こえ方が実現されています。
デジタル処理を介する以上、避けて通れないのが音声の遅延という課題です。周囲の音がダイレクトに届く速度と、マイクから入ってデジタル増幅された音が届く速度にズレが生じると、音が二重に聞こえてしまいます。cocoe Earでは高性能な処理チップを採用することにより、この処理遅延を約0.0025秒(2.5ミリ秒)という極低遅延に抑え込み、生の音とデジタル増幅された音が違和感なく完全に同期する音質を確保しています。

また、オープンイヤー型に共通する課題である「音漏れ」と「ハウリング」に対しては、nwmシリーズでも実績のある特許技術「PSZ(Personalized Sound Zone)」を搭載しています。耳元に逆位相の音波を発生させることで、周囲への音漏れを効果的に低減しています。集音器という特性上、マイクとスピーカーが物理的に近い位置に配置されているものの、このPSZ技術とチップによる制御により、不快なハウリングも抑制されている仕組みです。
装着感を忘れる軽量設計
外観は、一般的な耳掛け式のオープンイヤーイヤホンそのもので、集音器然とした古臭さはありません。

カラーバリエーションはホワイト、ベージュ、ブラックの3色が用意されています。

耳の裏側に位置するパーツに、集音機能のON/OFFスイッチと、手探りでも押しやすい大型のボリュームボタンが配置されています。電源ボタンそのものは存在せず、耳に掛けると自動的にオンになり、外すと自動でオフになる設計です。

本体重量は片側約10gと軽量で、IP54相当の防水防塵にも対応します。完全ワイヤレス仕様ではあるものの、紛失を防止するために左右のユニットを繋ぐ脱落防止用のネックストラップが付属しており、差し込み式で簡単に着脱が可能となっています。また、このストラップを装着したままでも充電ケースに収納することもできます。


イヤホンとして使いながら集音器も可能
集音機能とイヤホン機能は、併用可能です。また、収音機能は本体のボタンひとつでオンとオフを切り替えられます。
イヤホンとしては、12mmのダイナミックドライバーを搭載し、対応コーデックはSBC、AAC、LC3などに対応しています。マルチポイントは最大2台で、スマホとPCをつないでおけばオンライン会議にもそのまま使えます。正直なところ、音楽リスニング用として見ると低音の迫力はやや控えめで、音質最優先の人には物足りないかもしれません。ただ、耳をふさがない「ながら聞き」の快適さは、このタイプならではの強みです。

集音モードに関しては、集音の音量は0〜7の8段階で設定可能。音量を上げても、イヤホンのボリュームを上げたときのように耳に刺さる爆音にはならず、低音側も含めて全体が底上げされる感覚です。
この集音の音量との兼ね合いがあるため、集音モードがオンの場合は、本体のボリューム操作はイヤホン音量(スマートフォンの音量)とは紐づきません。集音をオフにした場合は、スマートフォンの音量と連動します。

なお、高音域を増幅する仕組みなので、マウスのクリック音やキーボードの打鍵音がかなり強調されて聞こえます。PC作業をしながら集音機能を常用するシーンはあまりなさそうなので、そこは許容範囲だと思いますが、デスクワーク時の使用には少し留意しておきたいところです。
逆に屋外では、川の音や鳥の声が鮮明になり、散歩との相性は良さそうでした。ただ、風切り音は少々気になります。これは私のヘアスタイル(坊主)により風がダイレクトに当たる影響も否定できないので、髪で本体が多少隠れるユーザーであれば、また違った印象になるかもしれません。
ハウリングについては、通常使用ではまったく問題ないレベルです。手で耳を覆ったり、操作しようと手を近づけたりした際には多少のハウリングが発生しますが、これはマイクとスピーカーの物理的距離に起因する構造上、仕方がない部分でしょう。
家族とテレビ問題を解く「cocoe Link」
集音器の出番として分かりやすいのが、家族と一緒にテレビを見る場面ではないでしょうか。自分には聞こえづらいので音量を上げると、家族からは大きすぎると言われてしまう。そんな経験のある人もいると思います。
そこで用意されているのが、別売アクセサリーの「cocoe Link(ココエリンク)」です。価格は1万560円(税込)。

cocoe Link自体にMEMSマイクが内蔵されているので、テレビのスピーカーの近くに置くだけで手軽に音声を拾って送信できます。周囲の環境音まで拾ってしまうのを避けるため、テレビのヘッドホン端子などと3.5mmオーディオケーブルで有線接続することも可能です。テレビ側の設定で「スピーカーとヘッドホン端子の同時出力」を有効にすれば、家族は普段通りのボリュームでテレビのスピーカーから音を聴き、cocoe Earの装着者は自分に最適な音量でクリアな音声を耳元で受け取ることができます。

この音声伝送には、Bluetoothの新しい音声配信規格である「Auracast」が採用されています。送信モードには、事前に設定した特定の機器にのみ音声を送る「プライベート送信」と、Auracastに対応した受信機器であれば特別な設定なしで広く受信できる「オープン送信」の2種類が用意されています。プライベート送信の設定も、一度cocoe Linkとcocoe Earを有線ケーブルで接続するだけで完了するため、複雑なペアリング操作を必要としません。

今後、公共スペースや商業施設などでAuracastによる音声配信が普及していけば、このオープン送信モードによって街中での利便性もさらに向上していく可能性を秘めています。
聞こえの底上げを日常に溶かすヒアラブル
cocoe Earは、集音器をメインとして構えて使うというより、オープンイヤーイヤホンとして日常的に使いつつ、必要なときに「聞こえ」を少し足せる、そういう製品だと感じました。「聞こえなかった音が聞こえる」体験自体はAirPods Proなどでも可能ですが、cocoe Earはオープンイヤーならではの耳をふさがない開放感と、一日中着けていても疲れにくい装着感が持ち味です。

「最近テレビの音量が大きくなったと家族から指摘されるようになった」「騒がしい場所での会話が少し聞き取りにくくなってきた」と感じているガジェットファン自身の自己投資としてはもちろん、操作がシンプルでデザインも洗練されているため、デジタル機器の複雑な設定を苦手とする親世代への実用的な贈り物としても、有力な選択肢になりそうです。
