
シンガポールのGyges Labsが開発した指輪型のAIボイスレコーダー「Vocci(ヴォッチ)」の国内展開が始まっています。販売代理店のフォーカルポイントがクラウドファンディングサイト「GREEN FUNDING」でプロジェクトを実施中で、支援価格は2万9990円から。カラーはLumen(シルバー)とMidnight(ブラック)の2色で、リターンの配送は2027年3月末までの予定です。

Vocciは、睡眠や心拍の計測を主な目的とする一般的なスマートリングとは異なり、音声の記録に機能を絞った製品です。

今回、フォーカルポイントからVocciをお借りしたので、発表会などで実際に使ってみた結果をレビューします。なお、お借りしたのはプロトタイプで、製品版とは仕様が異なる可能性があります。先に印象を書いておくと、アプリの中で記録を作り込むよりも、とりあえず録ってテキストにし、その先はほかのAIやアプリで活用する、という使い方に向いた製品でした。
3.2gの指輪だから、置き場所も着け場所も迷わない
Vocciはチタン製のリングで、サイズはUS6〜15号の展開です。重量はサイズによって3〜5g(公称値)。今回お借りしたUS10号は、実測で幅7.3mm、重さ3.2gでした。防塵防水はIP67に対応します。サイズ選びに迷う人向けに、サイジングキットが付くコースも用意されています。

ウェアラブル型のAIボイスレコーダーは、PLAUDやAnker、SwitchBotなどからも出ています。重さを比べると、Plaud NotePin Sは16.6g、SwitchBot AIマインドクリップは約16.8g、Anker Soundcore Workはマイク本体で約10gです。Vocciは数字の上でも軽いのですが、使っていて楽だったのは、重さよりも「どこに着けるか」を考えなくていい点でした。

クリップ型は襟元やストラップなど留める場所が必要になり、カード型はスマートフォンに貼り付けるか、机に置いて使うのが基本です。その点、Vocciは指に着けておくだけなので、持ち歩くための準備が要りません。録りたいと思ったときに、そのまま録音を始められます。録音そのものにスマートフォンとのペアリングは不要です。
充電は付属の充電ケースで行います。本体は約2日間の使用に対応し、ケースからは最大3回充電できるとのことです。

ボタンには、もう少しクリック感がほしい
操作はリングのボタンで行います。2回クリックで録音を開始し、録音中に1回クリックするとその場面にマークを付けられます。録音中にもう一度2回クリックすると、録音が終了します。

気になったのは押し心地です。クリック感が乏しく、押せたかどうかが指先で分かりにくいため、狙って操作しようとすると意外と難しいと感じました。

その一方で、狙っていないときに押せてしまうこともありました。発表会の途中、両手を組んだときに指がボタンに当たってダブルクリックと判定され、録音が終了してしまいました。指輪は、手を組む、物を握るといった日常の動作でボタンにほかの指や物が当たりやすい位置にあります。押した手応えが小さいことと、意図しない操作が起きることは、同じボタンの設計から来ているのかもしれません。
幸いなことに、録音が終了するとリングが振動するので、録音が停止したことにすぐ気付き、録り直せました。指輪は録音中に目で確認しにくい位置にあるので、振動で知らせる仕組みは理にかなっています。

録音精度に問題はなかった
使う前にいちばん不安だったのは、指輪という小さな本体で、周囲の音声をきちんと録れるのかという点でした。マイクはMEMSマイクが1基で、集音範囲は最大5mとされています。
実際に、マイクとスピーカーを使った一般的なメディア向け発表会で使ってみました。結果として、文字起こしは他のAIボイスレコーダーと遜色ないレベルでした。

一方で、本体ストレージは64MBと小さく、録音できるのは約8時間分です。ほかのウェアラブル型が8GB〜64GBのストレージを持つのと比べると、長時間の録音を本体に溜めておくより、アプリとこまめに同期して使う前提の設計と言えそうです。
文字起こしと要約は他社と同等、編集機能は手薄
文字起こしは101言語に対応し、話者別のラベルが付きます。要約は内容に応じたテンプレートで作られ、発表会の録音では「概要」「キーポイント」「決定事項」「ハイライト」「チャプター」という構成でまとめられました。チャプターにはタイムスタンプが付くので、あとから聞き直したい箇所を探すときに便利です。会話からToDoを拾い出す機能もあります。

文字起こしと要約の品質は、Plaudなど他社のAIボイスレコーダーと同等という印象です。
ただ、文字起こしの編集機能は手薄です。話者は「Speaker 1」のようなラベルのままで、名前を割り当てることができません。司会と複数の登壇者が入れ替わる発表会のような録音では、誰の発言なのかを自分で照らし合わせる必要があります。
カスタム辞書(用語登録)も見当たりませんでした。固有名詞の表記をそろえる手段がなく、実際、同じ発表会を録った2つのセッション(先にあげた、途中で録音を終了してしまったもの)で、AIが付けたタイトルは一方が「KAGU」、もう一方が「カグー」になっていました(ちなみに正解は「CAGUUU」)。いずれも執筆時点のアプリで確認した内容なので、今後のアップデートで変わる可能性はあります。

録って、テキストにして、ほかのAIで使う
Vocciは録音データのエクスポートに対応しており、音声はWAV/M4A/MP3、文字起こしはテキスト、要約はMarkdown形式で書き出せます。さらにMCP(Model Context Protocol)にも対応しています。MCPは、AIと外部のデータやツールをつなぐためのオープンな規格で、これによりChatGPTやClaudeなどからVocciの記録を参照できます。

実際にClaudeとつないでみたところ、Claudeからセッション一覧(タイトル、概要、録音時間)、話者ラベルとタイムスタンプ付きの文字起こし、Markdown形式の要約、音声ファイルの情報を取得できました。「今日の発表会の要点をまとめて」と頼むと、Vocciの記録を探して答えてくれます。なお、Vocciの説明によれば、MCP経由のアクセスは読み取り専用で、Claude側から記録を作成・編集・削除することはできません。

使ってみて感じたのは、Vocciはアプリの中で記録を整えて完結させるより、録音とテキスト化までを任せ、その先は普段使っているAIやアプリで加工するスタイルに合っているということです。この使い方であれば、アプリ側の編集機能が手薄でも、運用で補える部分はあるという印象です。
録音データをAI側から直接参照させる流れはVocciに限らず、PLAUDも「Plaud MCP & CLI」を公開しています。

Vocciのアプリでも、独自のAI機能「Vocci AI」が使えます。録音内容に関して質問したり、一般的なAIアシスタント的に使うことも可能。リングのボタンを長押ししている間、リングのマイクが有効になり、音声入力を行うこともできます。

ただ、レスポンスなども若干遅く、あえて使う理由がないというのが正直なところです。この点も含めて、外部から利用する使い方に向いているのではという気がします。
料金プラン
文字起こしやAI機能の利用には、Vocciのサブスクリプションプランが関係します。プランは3種類で、有料プランの料金は決済する場所(App Store、Google Play、Vocci.aiのWeb)によって異なります。
| 項目 | Starter | Plus | Pro |
|---|---|---|---|
| 文字起こし | 300分/月 | 1200分/月 | 無制限 |
| AI利用回数 | 30回 | 150回 | 300回 |
| クラウドストレージ | 2GB | 10GB | 20GB |
| App Store | 無料 | 月額3000円 年額2万2000円 | 月額6000円 年額4万5000円 |
| Google Play | 無料 | 月額3380円 年額2万5800円 | 月額6400円 年額5万700円 |
| Vocci.ai(Web) | 無料 | 月額15.99ドル 年額119.99ドル | 月額29.99ドル 年額239.99ドル |
無料のStarterでも月300分の文字起こしができ、この無料枠は他社の主な製品とほぼ横並びです。クラウドファンディングの各コースには、Proプランが1か月分付きます。
円建てで比べると、App Store経由のほうがGoogle Play経由より安く、Plusの月額で380円、年額で3800円の差があります。Androidスマートフォンで使う場合はこの差を頭に入れておきたいところです。年額プランにすると、App Store経由のPlusは月あたり約1833円になります。
有料プランの料金は、他社と比べるとやや高めです。月額同士で比べると、同じ月1200分の文字起こしができるSwitchBot AIマインドクリップのプレミアムプランは月額1980円、VocciのPlusはApp Store経由でも月額3000円です。また、無制限のProでもAI利用回数には月300回の上限が設定されています。
ウェアラブル型AIボイスレコーダーとの比較
| 項目 | Vocci | Plaud NotePin S | Anker Soundcore Work | SwitchBot AIマインドクリップ |
|---|---|---|---|---|
| 装着方法 | 指輪(ペンダントも可) | マグネット/クリップ/ストラップ/リストバンド | 襟元クリップ/ネックレス/スマホにマグネット | クリップ |
| 重量 | 3〜5g(実測3.2g、US10号) | 16.6g | 約10g(マイク本体) | 約16.8g |
| 録音操作 | ボタン(2回クリックで開始/終了) | ボタン(長押しで開始) | ボタン | スライドスイッチ |
| 連続録音 | 最大8時間 | 最大20時間 | 8時間(ケース併用で32時間) | 最大20時間 |
| 本体ストレージ | 64MB(約8時間) | 64GB | 8GB/64GB | 64GB |
| 無料枠 | 300分/月 | 300分/月 | 300分/月 | 300分/月 |
| 外部AI連携 | MCP | MCP/CLI | 非対応 | OpenAPI/CLI |
| 価格(税込) | 支援価格2万9990円〜 | 2万8600円 | 2万4990円(8GB)/2万6990円(64GB) | 1万9980円 |
並べてみると、Vocciのいちばんの違いは重さと装着方法です。ほかの3製品が10〜17g前後のクリップ型・ピン型であるのに対し、Vocciは3〜5gの指輪で、着ける場所を選びません。
その代わり、本体ストレージと連続録音時間は控えめです。録音を何日分も本体に溜めておくより、必要な場面で録って、こまめに同期する使い方に向いています。価格は支援価格で比べても、他社製品と同じか、やや高い価格帯です。
まとめ:アプリで完結させず、録音の入口として使う指輪
Vocciは、身につけたまま思い立ったときに録音でき、その記録をほかのAIやアプリに渡すための入口として使う製品です。
良かったのは、指輪なので置き場所や着け場所に困らないことと、他社と遜色ない文字起こしができたことの2点です。一方で、ボタンのクリック感と、文字起こしの編集機能は気になりました。ただこれらはプロトタイプでの評価なので、製品版での改善に期待したいところです。価格は支援価格で2万9990円からと、ウェアラブル型の他社製品と同じか、やや高い水準です。
こんな人に向いていそうです。
- 録音デバイスの置き場所や留め場所を考えたくない人
- 取材や打ち合わせなど、突発的に録りたい場面が多い人
- 文字起こしや要約を、ChatGPTやClaudeなど手持ちのAIで加工したい人
逆に、次のような人には検討すべきポイントがあります。
- アプリの中で話者名や表記を整えて、そのまま議事録として使いたい人
- 専門用語や固有名詞の多い会話を、表記までそろえて残したい人
- 確かな押し心地のボタン操作を重視する人
GREEN FUNDINGでの支援は、2026年12月25日まで。「二子玉川 蔦屋家電+」や「SHIBUYA TSUTAYA」で実機展示とリングサイズの計測ができるとのこと(どちらも10月末までの予定)。東京近郊で、実際の操作感などが気になる人は、チェックしてみてください。
