次世代スマートグラス「Even G3」進化の本質は操作性。CEOが明かす次の一手

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Even Realitiesは2026年7月17日、東京都内でユーザーイベント「Even Day Japan 2026 supported by JUN GINZA」を開催しました。ユーザー、開発者、パートナー、メディア合わせて300人を超える参加者が集まる、かなり大きな規模のイベントとなりました。

「当初は70人規模の会場を予約していたが、300〜400人の応募があり、急きょ会場を変更した」とのこと。日本コミュニティの熱量は、同社の想定を大きく上回っていたようです。

JUN GINZAとEvenの出会いは「客が持ち込んだG1」から

イベント名にある通り、今回は銀座のメガネ店・JUN GINZAが協力しています。冒頭では日本カントリーマネージャーのKevin氏に続き、JUN GINZA代表取締役社長の米盛氏が挨拶に立ちました。米盛氏は今年でメガネ業界30年目とのことです。

▲JUN GINZA代表取締役社長 米盛氏

EvenとJUN GINZAの出会いは2025年8月、顧客がEven G1を店舗に持ち込んだことがきっかけだったそうです。米盛氏はすぐに、交流のあったVR・XR分野で著名な@GOROman氏に連絡。駆けつけたGOROman氏を交えた3人でG1の体験会を開き、その場で出た「JUN GINZAでこれを扱えるようになったらいいよね」という一言から、公式窓口への問い合わせが始まったといいます。

やり取りを重ねていた同年9月には、知人の紹介が偶然重なる形でCEOのWill Wang氏本人がJUN GINZAに来店し、直接話す機会を得たとのこと。米盛氏は「生活に寄り添い、サポートしてくれるアイウェアを作りたいという熱意に感動した」と当時を振り返っていました。

なお米盛氏は挨拶の冒頭で、G2販売時に入金や連絡が滞ったことについて謝罪する場面もありました。そうした経緯も含めてオープンに語られるあたり、メーカーと販売店というより「コミュニティの一員同士」に近い距離を感じました。

基調講演「Build Even Together」──目指すは「次のiPhone」

Even RealitiesのWill Wang CEOの基調講演は、インターフェースの変遷の整理から始まりました。PCからスマートフォンへとデバイスが身近になるほど画面は小さくなり、できることが制限される。だからスマートフォンとは別にタブレットが必要になり、より身近なウォッチは画面が小さすぎて用途が限られる、という構図です。

▲Even Realities Founder & CEO Will Wang氏

この制約を解消できるのがスマートグラスだ、というのが同社の立場です。常に身につけられるほど小さくしながら、画面サイズの制約を受けない。G1で表示領域を小さめに抑えたのは日常使いを最優先したためで、G2では表示領域を広げてできることを増やした。将来の製品でもこの流れを続け、いずれはスマートフォンより役立つデバイスにしたい──Wang氏はこれを「次のiPhoneを作ろうとしている」と表現していました。

その基盤として強調されたのが、開発者エコシステム「Even Hub」です。公開から3〜4カ月で登録アプリは500本、登録開発者は約5000人。さらに、ストアには公開されていない「自分専用アプリ」が約4000本あるとのことです。AIでアプリ開発のハードルが下がり、開発チームを持たない個人が自分のためだけの体験を作る。Wang氏自身、この動きはうれしい想定外だったと話していました。

Claude CodeやCodexといったコーディングエージェントをグラスから操作できる「ターミナルモード」にも言及がありました。公開は1〜2カ月前ですが、開発者から「キラーアプリだ」という声が届いているそうです。まだ粗削りであることは認めつつ、対応エージェントの拡大を含む改善版を1〜2カ月内に出す計画としています。

今四半期のロードマップは「Conversate」「Even AI」「Even Hub」の3本

直近のアップデート計画として挙げられたのは、次の3つです。

  • 会話サポート(Conversate):翻訳機能との統合に続き、AIの賢さや個人のナレッジベースを使ったパーソナライズを強化する大型アップデートを2〜3カ月内に予定
  • Even AI:能力・メモリー機能とも「まだ十分ではない」とし、専任のエージェントチームを拡大済み。1〜2カ月内に改善版を予定
  • Even Hub:フォルダー分けやおすすめ表示など、ユーザー側の体験を作り直したリニューアルを2〜3カ月内に予定

いずれも「今四半期に出す」と明言していたのは、なかなか強気なスケジュールです。Wang氏は「DiscordやXの声はすべて読んでいる」とも話しており、コミュニティのフィードバックがそのままロードマップに反映されている印象を受けました。

Appleを離れ、深センで創業した理由

講演の後半では、創業の経緯にも触れました。Wang氏は元Appleのエンジニアで、憧れて入社したものの、年々「安全な賭け」に寄っていく意思決定に失望して3年で退社。シリコンバレーで「初期のAppleの精神を持つハードウェアスタートアップ」を探したものの見つからず、2018年、サプライチェーンと人材が集まる深センに渡って創業したという流れです。

「自動車業界を変えたのは名門メーカーではなくテスラだった。AIを変えたのは巨大IT企業ではなくOpenAIで、それを追うのもGeminiではなくAnthropicだ。私たちはこの業界のテスラに、OpenAIに、Anthropicになりたい」とWang氏。AppleやSamsungがこの市場に参入してくることは恐れていない、と繰り返し強調していました。

コミュニティ開発者が登壇したパネルディスカッション

パネルディスカッションには、Even開発チームのDavid氏をモデレーターに、日本のコミュニティから電電猫猫氏、ミスターVR氏、@takashicaompany氏が登壇しました。「名探偵コナンや電脳コイルのロマンでG1を買った」という話から、Even Hubで公開しているアプリの紹介、SDKの制限やジェスチャー操作への具体的な要望まで、開発者イベントらしい濃い内容です。

▲左からWang氏、@takashicompany氏、ミスターVR氏、電電猫猫氏、David氏

会場からの質問も含めて要望が次々と挙がりましたが、Wang氏は「Conversateでメモを取っていたので、このままエンジニアに送る」と応じていました。実際、長押しジェスチャーの開放を求める質問には「ジェスチャー全体を再設計中で、2カ月ほどで出せる見込み」と、その場で具体的な回答が返っています。

余談ですが、@takashicompany氏が開発した2048スタイルのパズルゲーム「Make⑮」がWang氏のお気に入りだそうです。

CEO囲み取材──G3、カメラ、日本市場

イベントと前後して、メディア向けにWang氏の囲み取材が行われました。ここからは、その内容をトピックごとにまとめます。

▲イベント全体を通じて、通訳は行われずEven G2のライブ翻訳機能で対応されていました

G3の課題は表示ではなく「操作」

囲み取材では、次世代モデル「G3」に質問が集まりました。Wang氏によると、G3で最も力を入れているのは「操作(インタラクション)」だそうです。画面をプライベートに持ち歩けるという価値はG2で確立できた一方、現状のリングと音声だけでは操作手段として十分ではない。よりシームレスな操作を実現できれば、開発者エコシステムも次の段階に進む、という考えです。

開発体制の変化についても語られました。G1は20人ほどのチームが地下室で作り、G2の頃には70人規模、現在は300〜400人になっているとのこと。G1でフォームファクターを定義し、G2で同じ形を磨き上げた。G3は「大きな跳躍になる」としつつ、年内のリリースはなく、時期の明言は避けました。

デザイン面では、販売数量の拡大に合わせて形状やカラーの選択肢を増やす意向です。G3では複数の形状を用意する可能性が高いとし、既存のクリップに続くアクセサリー類も「Apple Watchのバンドのように」拡充していく方向を示しました。

カメラを載せない理由

現行世代にカメラがないのは、技術ではなく社会受容の問題だとWang氏は説明します。「少なくとも現時点では、顔にカメラを付けるべきではない」というのが同社の立場で、録音機能や音声データの保存も持たせていません。翻訳もデータを保存せず、クラウドの翻訳APIに直接渡しているそうです。

「カメラ付きグラスのユーザーは、着けていることを隠したがる。G2のユーザーは、着けていることを誇りに思ってくれる」という対比は、この哲学をよく表していると感じました。もっとも、カメラがAIの文脈理解に役立つこと自体は認めており、規制や社会の受け止めが整った将来には、本体統合だけでなく着脱式アクセサリーとして提供する道もあり得るとしています。

日本市場は年初の5%未満から15%近くへ

日本市場については、全販売に占める比率が年初の5%未満から15%近くまで伸びているとのことです。ヨドバシカメラとビックカメラでの店頭販売を始めたばかりで、今後は「体験できる店頭の拡大」「実際の利用シーンを見せるマーケティング」「初期設定(オンボーディング)の改善」の3点に取り組むとしています。アンバサダーやタレントの起用を含む、大型のマーケティング施策も検討中だそうです。

このほか、メガネ型デバイスの重量については「40gを超えてはいけない。40g以内でも35g前後が最適」という具体的な数字も出ました。エンタープライズ向けには、翻訳やAIを自社のモデルに差し替えられるSDKを2026年Q4をめどに準備しているものの、優先はあくまでコンシューマーとのことです。

なお、現行機能の有料化は明確に否定しています。より高度なエージェント機能などを有料オプションとして追加する可能性はあるものの、「現在無料の機能は無料のまま維持する。ハードウェアを買った人が、サブスクリプションなしで十分な体験を得られるようにしたい」と明言していました。

まとめ:CEOが「コミュニティの中」にいるイベント

正直なところ、個々の発表内容よりも、CEO自らがコミュニティの中に入って要望を拾っていく姿勢が印象に残ったイベントでした。囲み取材でWang氏が話した「ステージの上に立つのではなく、自分たちもコミュニティの一員である必要がある」という言葉は、この日の運営そのものと一致していたと思います。

G3はまだ先ですが、当面はConversate・Even AI・Even Hubのアップデートが数カ月単位で続くとのこと。G2ユーザーとしては、体験が短いスパンで変わっていくフェーズに立ち会えるのは楽しみなところです。

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