
ここ数年、スマートグラス市場が活気づいています。そんな中で、Even Realitiesの「Even G2」は、カメラもスピーカーも搭載せず、見た目はごく普通の眼鏡というアプローチを貫いた一台です。今回、専用のスマートリング「Even R1」と組み合わせて使う機会を得ましたので、実機を試した感想をお伝えします。
価格は税込でEven G2が9万9800円、Even R1が4万1800円。セットで購入するとR1が半額相当となり、合計12万700円です。現在は家電量販店などでも購入可能となっています。
発売からはやや時間が経った製品ですが、4月末にAIコーディングエージェントを眼鏡から操作できる「ターミナルモード」が追加され、X上では開発者界隈を中心に話題となっていました。Even G2は買い切りで終わる製品ではなく、ソフトウェアアップデートで進化を続けている点もポイントです。
「眼鏡に見える」を本気で追求した設計
Even G2の特徴は、なんといっても本当に普通の眼鏡に見えるという点です。多くのスマートグラスがテンプル部分の太さや、レンズ周辺のセンサー類で「IT機器であること」を主張するなか、Even G2はあえてカメラもスピーカーも搭載していません。レンズ上部をよく見ると投影用の加工がうっすらと確認できますが、それ以外はちょっと太めの、ごく普通のフレームです。


フレーム素材には航空宇宙グレードのマグネシウムとチタンを採用し、本体重量は約36g。フレームは少し丸みを帯びた「Aタイプ」とスクエアの「Bタイプ」があり、カラーはそれぞれGrey/Brown/Greenの3色展開です。

充電は付属の専用ケースに収めて行う方式で、完全ワイヤレスイヤホンに近いイメージです。本体だけで最大2日間駆動し、ケース併用で約7回分の充電が可能とのこと。防塵防水性能はIP65に対応しており、急な雨やほこりも気にせず日常的に使えます。


軽量で鼻や側頭部への圧迫感も少なく、長時間装着していても疲れにくい印象です。「一日中つけられるスマートグラス」というコンセプトは、装着感の面では十分に実現できているように感じました。
ディスプレイの見え方 ─ 屋外で使えるか
ディスプレイは、レンズ上部に投影される緑色の文字や記号で情報を表示する仕組みです。解像度は640×350ドット。視野中央付近に表示される情報は思っていたより鮮明で、文字の判読性も良好です。
ただ、屋外での使用では明るさに課題があります。直射日光が強く当たる場所では、表示が背景の明るさに負けてしまい、情報を読み取るのにかなり苦労しました。一方で、木陰や屋内、曇り空の下では十分実用的な明るさで表示されます。おそらく、都市部のビルの谷間などでも問題はないでしょう。

度付きレンズ対応 ─ Even G2最大の悩みどころ
Even G2は度付きレンズにも対応し、−12.00から+12.00までの処方データに基づくレンズ加工が可能です。眼鏡ユーザーにとっては大きな魅力ですが、ここに最大の悩みどころがあります。
それは、ディスプレイ(反射板)が組み込まれたレンズそのものを交換する仕様であるという点です。一般的な眼鏡店では加工対応ができず、JUN GINZAをはじめとする認定眼鏡店でのみ取り扱われています。街の眼鏡店で気軽に作れる状況ではない、という点は留意しておきたいところです。

もうひとつの課題が、一度度を入れてしまうと、別の人に貸して試してもらうことが事実上難しくなるという点。この点に関しては、ディスプレイ部とは別にサポートレンズを内側に装着できるRokid社のスマートグラスのほうが柔軟性は上だと感じます。

ただし、Even G2はその分だけ構造をシンプルにできており、36gという軽量化や眼鏡らしさにつながっているとも言えます。どちらの設計思想を取るかは、使い方次第といったところでしょうか。
Even R1の操作感
Even G2はテンプル先端のタッチ操作にも対応しますが、実用上はEven R1とのペアでの運用が前提と考えてよさそうです。R1の表面をタップすれば「決定」、ダブルタップで「キャンセル」、リング表面を指でなぞることで「スクロール」と、操作は直感的です。会話中に手を顔まで持ち上げる必要がなく、ジェスチャーが小さく済むのは利点と感じました。

ただ、惜しい点もあります。それは、無意識に指輪に触れてしまったときに、ディスプレイが意図せず点いてしまうこと。何かを掴んだり、頬杖をついたりした際にも反応してしまうケースがあり、ここはやや気になりました。使わないときは外しておけばよいのですが、そうすると「常時装着できるスマートリング」というR1のメリットが薄れてしまいます。今後のファームウェアアップデートで誤動作の判別が改善されることを期待したいところです。

R1には心拍数、SpO2、体温、歩数といったヘルスケア系のセンサーも内蔵されており、Even Realitiesアプリで計測値を確認できます。一般的なスマートリング相当の計測機能はひととおり押さえている印象で、Even G2のコントローラーとして使いつつ、健康モニタリングも兼ねられるのは合理的な設計です。

主要機能を試す
ここからは、Even G2で利用できる主な機能を駆け足で見ていきます。
リアルタイム翻訳 ─ 対応言語数は35言語。相手の発話がほぼ遅延なくテキスト化され、視界に表示されます。英語でのプレゼンや会議で使えれば、メモを取る労力を大幅に減らせそうです。
会話サポート+AI要約 ─ 会話の内容をテキスト化し、終了後にアプリでAI要約として整理してくれる機能です。プライバシーへの配慮から、音声そのものは録音されず、テキスト化のみが行われます。インタビュー後の文字起こし作業を省力化できる可能性があります。
準備メモ/AIキュー ─ 会話サポートの付属機能。会話前に関連するファイルをアップロードしておくことで、AIが会話の内容をより理解し、関連キーワードや聞き慣れない用語が出たときにAIが補足を出してくれたり、文字起こしをより正確にしてくれたりします。
音声操作テレプロンプター ─ あらかじめ用意した原稿を視界に表示し、自分の声に合わせて自動でスクロールしてくれます。
ハンズフリーナビ/通知/カレンダー/クイックリスト ─ いずれも日常使いを想定した機能で、スマホを取り出さずに済むという点で恩恵を感じやすい部分です。
「Hey, Even」音声操作 ─ 検索や機能切り替えを音声で実行できます。聞き取り精度を含め、応答速度はスムーズでした。


Even Hub ─ 開発者を惹きつけるエコシステム
Even G2のもうひとつの特徴と言えそうなのが、専用のアプリハブ「Even Hub」の存在です。SDKが公開されており、コミュニティの開発者が作成したアプリが続々と公開されています。
ラインナップを眺めていると、タイマーや天気予報などから、EPUBや青空文庫の表示、チェスやSnakeなどのゲームまでバラエティに富んでいます。すごく便利というわけではないですが、必要な人には刺さりそうな顔ぶれです。
ちょっとしたアプリも数多く公開されており、「自分でアプリを作って試してみたい」と思わせる構造になっています。純粋な完成品としてではなく、プラットフォームとして育っていく可能性を感じさせる部分です。

まとめ ─ こんな人に勧められる
Even G2+Even R1は、「スマートグラスらしくないスマートグラス」を求める人にとっては、現時点で有力な選択肢のひとつだと思います。プレゼンや会議、語学コミュニケーションでさりげない補助が欲しい人、SDKを触って自分でアプリを作ってみたい開発者層には、勧められる一本です。
ただ、セットで12万円超、度入りにすればさらにレンズ代が乗ってくるという価格感も含めて、気軽に手を出しにくいというのが正直なところです。
個人的には、カメラを搭載したRokid スマートAIグラスのほうが、使っていて楽しさを感じます。しかしながら、カメラがあるぶん使用場所を選ぶのも確かで、その点Even G2は場所を選ばずに使えるのが大きなメリットです。常時身に着けて使いたいという人には、最適な選択になるかもしれません。
